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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

第十五帖 蓬生(よもぎう)源氏物語

【源氏物語539 第15帖 蓬生39 完】末摘花の姫君は源氏の☀️庇護のもと幸せに暮らした。のちに二条の東院に迎えられた。

昔よりいっそう強い勢力を得ている源氏は、 思いやりも深くなった今の心から、 扶《たす》け起こそうとしている女王の家は、 人影もにぎやかに見えてきて、 繁《しげ》りほうだいですごいものに見えた木や草も整理されて、 流れに水の通るようになり、 立ち…

🌿源氏物語 第15帖 蓬生(よもぎう)〜光源氏が須磨へ蟄居してから帰京後までの話。

光源氏が須磨へ蟄居してから帰京後までの話。 源氏が都を追われ、後見を失った末摘花の生活は困窮を極めていた。 邸は荒れ果てて召使たちも去り、 受領の北の方となっている叔母が姫を娘の女房に迎えようとするが、 末摘花は応じない。 やがて源氏が帰京した…

【源氏物語538 第15帖 蓬生38】源氏の手厚い庇護のもと、稀に見るほどに善良な末摘花の元に 去っていた女房達も戻ってきた

手紙はこまごまと書いて送ることを怠らない。 二条の院にすぐ近い地所へ このごろ建築させている家のことを、 源氏は末摘花に告げて、 そこへあなたを迎えようと思う、 今から童女として使うのによい子供を選んで 馴らしておおきなさい。 ともその手紙には書…

【源氏物語537 第15帖 蓬生37】常陸宮に贈るのは 源氏自身が何かと指図をして細やかに支援をし、屋敷の手入れなどもさせた。

賀茂祭り、斎院の御禊《ごけい》などのあるころは、 その用意の品という名義で諸方から源氏へ送って来る物の多いのを、 源氏はまたあちらこちらへ分配した。 その中でも常陸の宮へ贈るのは、 源氏自身が何かと指図《さしず》をして、 宮邸に足らぬ物を何かと…

【源氏物語536 第15帖 蓬生36】末摘花は、親のしたままを長く保っていく人として心の惹かれる。差恥心の多いところもさすがに貴女であると思った。

落ちようとする月の光が 西の妻戸の開いた口からさしてきて、 その向こうにあるはずの廊もなくなっていたし、 廂《ひさし》の板もすっかり取れた家であるから、 明るく室内が見渡された。 昔のままに飾りつけのそろっていることは、 忍ぶ草のおい茂った外見…

【源氏物語535 第15帖 蓬生35】源氏は末摘花と歌を交わす。自身の植えた松ではないが、昔に比べて高くなった木を見ても、年月の長い隔たりが源氏に思われた。

泊まって行くことも この家の様子と自身とが調和の取れないことを思って、 もっともらしく口実を作って源氏は帰ろうとした。 自身の植えた松ではないが、 昔に比べて高くなった木を見ても、 年月の長い隔たりが源氏に思われた。 そして源氏の自身の今日の身…

【源氏物語534 第15帖 蓬生34】源氏が几帳の垂れ絹をあげると、末摘花は恥ずかしそうに座っていて よう返事をしようとしない。源氏は姫君のために言葉を尽くした。

「長くお逢いしないでも、 私の心だけは変わらずにあなたを思っていたのですが、 何ともあなたが言ってくださらないものだから、 恨めしくて、 今までためすつもりで冷淡を装っていたのですよ。 しかし、三輪《みわ》の杉《すぎ》ではないが、 この前の木立…

【源氏物語533 第15帖 蓬生33】源氏の君の来訪に、末摘花の姫君は嬉しかったが立派な姿の源氏に自分を見られるのを恥ずかしく思った。

女王《にょおう》は望みをかけて来たことの 事実になったことはうれしかったが、 りっぱな姿の源氏に見られる自分を恥ずかしく思った。 大弐《だいに》の夫人の贈った衣服はそれまで、 いやな気がしてよく見ようともしなかったのを、 女房らが香を入れる唐櫃…

【源氏物語532 第15帖 蓬生32】惟光は草の露を払いながら案内した。木の枝から散る雫も秋の時雨のように降る。源氏は指貫の裾を濡らしながら訪ねていく🌿

「とても中をお歩きになれないほどの露でございます。 蓬《よもぎ》を少し払わせましてから おいでになりましたら」 この惟光《これみつ》の言葉を聞いて、 源氏は、 尋ねても われこそ訪《と》はめ 道もなく 深き蓬の もとの心を」 と口ずさんだが、 やはり…

【源氏物語530 第15帖 蓬生30】老いた女房は、末摘花の姫君が大変な苦労をしながらも待ち続けていたことを伝える。惟光は源氏に初めからの事を報告した。

「変わっていらっしゃれば こんなお邸にそのまま住んでおいでになるはずもありません。 御推察なさいまして あなたからよろしくお返辞を申し上げてください。 私どものような老人でさえ経験したことのないような 苦しみをなめて今日までお待ちになったのでご…

【源氏物語529 第15帖 蓬生29】惟光は自分の名を告げた。家の人達は、狩衣姿の惟光を狐か何かと思ったが、姫君がまだおいでなのか聞くと皆 笑い出した。

「いらっしゃったのはどなたですか」 惟光《これみつ》は自分の名を告げてから、 「侍従さんという方にちょっとお目にかかりたいのですが」 と言った。 「その人はよそへ行きました。 けれども侍従の仲間の者がおります」 と言う声は、昔よりもずっと老人じ…

【源氏物語527 第15帖 蓬生27】末摘花の姫君は、父宮の夢を見た。亡き人を恋ふる袂のほどなきに荒れたる軒の雫さへ添ふ。平生にも似ず歌を思ってみたのである。

末摘花の君は物悩ましい初夏の日に、 その昼間うたた寝をした時の夢に父宮を見て、 さめてからも名残《なごり》の思いにとらわれて、 悲しみながら雨の洩《も》って濡れた廂《ひさし》の 室の端のほうを拭《ふ》かせたり 部屋の中を片づけさせたりなどして、…

【源氏物語526 第15帖 蓬生26】荒れた大木が森のような邸の前に来た。末に藤がかかり、月の光に花がなびき その香が懐かしい。常陸宮の屋敷だと気づく。

車の中の源氏は昔をうつらうつらと幻に見ていると、 形もないほどに荒れた大木が 森のような邸《やしき》の前に来た。 高い松に藤がかかって月の光に花のなびくのが見え、 風といっしょにその香がなつかしく送られてくる。 橘《たちばな》とはまた違った感じ…

【源氏物語525 第15帖 蓬生25】四月ごろに花散里を訪ねようと二条の院を出た。雨がやんだあとで月が出てきた。青春時代の忍び歩きの思い出される艶な夕月夜であった。

源氏は長くこがれ続けた紫夫人のもとへ 帰りえた満足感が大きくて、 ただの恋人たちの所などへは 足が向かない時期でもあったから、 常陸の宮の女王はまだ生きているだろうか というほどのことは時々心に上らないことはなかったが、 捜し出してやりたいと思…

【源氏物語524 第15帖 蓬生24】頼りにしていた侍従までも去り、仕える者たちも他に勤め先を探している。丈の高い雑草に囲まれた中の家で 末摘花は一人で寂しく暮らした。

「侍従はどうしました。暗くなりましたよ」 と大弐《だいに》夫人に小言《こごと》を言われて、 侍従は夢中で車に乗ってしまった。 そしてあとばかりが顧みられた。 困りながらも長い間離れて行かなかった人が、 こんなふうにして別れて行ったことで、 女王…

【源氏物語523 第15帖 蓬生23】末摘花の姫君と侍従は二人で歌を交わした。姫君は非常に泣き、侍従は命ある限り誠意を誓った。

「絶ゆまじき すぢを頼みし 玉かづら思ひの ほかにかけ離れぬる 死んだ乳母《まま》が遺言したこともあるからね、 つまらない私だけれど一生あなたの世話をしたいと思っていた。 あなたが捨ててしまうのももっともだけれど、 だれがあなたの代わりになって私…

【源氏物語522 第15帖 蓬生22】泣く泣く侍従は大弐夫人と共に九州に。好意に むくいるものがなかったので、末摘花は自身の美しい髪を鬘にしたものを薫香とともに侍従に贈った。

侍従は名残《なごり》を惜しむ間もなくて、 泣く泣く女王《にょおう》に、 「それでは、今日はあんなにおっしゃいますから、 お送りにだけついてまいります。 あちらがああおっしゃるのももっともですし、 あなた様が行きたく思召《おぼしめ》さないのも 御…

【源氏物語521 第15帖 蓬生 21】大弐の夫人の叔母は、源氏の君は兵部卿の宮の姫君(若紫)を大切にして他に目がいかないようだと伝える。希望を断たれ末摘花は悲しくなり泣きいった。

「御好意はうれしいのですが、 人並みの人にもなれない私はこのままここで死んで行くのが 何よりもよく似合うことだろうと思います」 とだけ末摘花は言う。 「それはそうお思いになるのはごもっともですが、 生きている人間であって、 こんなひどい場所に住…

【源氏物語520 第15帖 蓬生20】大弐夫人の叔母は、自分の夫が蔑まれていたことに傷ついていた。でも 案外 自分たちの階級も気楽だと言う。

「宮様がおいでになったころ、 私の結婚相手が悪いからって、 交際するのをおきらいになったものですから、 私らもついかけ離れた冷淡なふうになっていましたものの、 それからも こちら様は源氏の大将さんなどと 御結婚をなさるような御幸運でいらっしゃい…

【源氏物語519 第15帖 蓬生19】大弐の夫人は 姫のことを気の毒がるが、実は九州の長官夫人になって出発して行く希望に燃えているのである。

「もう出発しなければならないのですが、 こちらのことが気がかりなものですから、 今日は侍従の迎えがてらお訪ねしました。 私の好意をくんでくださらないで、 御自分がちょっとでも来てくださることを 御承知にならないことはやむをえませんが、 せめて侍…

【源氏物語518 第15帖 蓬生18】叔母の大弐の夫人が尋ねてきた。屋敷はさらにひどい荒れよう出会った。応接には侍従が対応した。

そんなころであるが大弐の夫人が突然訪ねて来た。 平生はそれほど親密にはしていないのであるが、 つれて行きたい心から、 作った女王の衣裳《いしょう》なども持って、 よい車に乗って来た得意な顔の夫人が にわかに常陸の宮邸へ現われたのである。 門をあ…

【源氏物語517 第15帖 蓬生17】冬になり末摘花は悲しく物思いの日々である。兄の禅師は源氏の八講に招かれたが、自分を尋ねることもなかったことに 望みがないと思うようになった。

冬にはいればはいるほど頼りなさはひどくなって、 悲しく物思いばかりして暮らす女王だった。 源氏のほうでは故院のための盛んな八講を催して、 世間がそれに湧《わ》き立っていた。 僧などは平凡な者を呼ばずに 学問と徳行のすぐれたのを選んで招じたその物…

【源氏物語516 第15帖 蓬生16】叔母の大弐の夫人は、なお誘うのであるが、末摘花は一途に源氏を信じている。ただひたすら忍耐し待ち続けているのである。

「京へお置きして参ることは気がかりでなりませんから いらっしゃいませ」 と誘うのであるが、 女王の心は なお忘れられた形になっている源氏を頼みにしていた。 どんなに時がたっても 自分の思い出される機会のないわけはない、 あれほど堅い誓いを自分にし…

【源氏物語515 第15帖 蓬生15】大弐の夫人は末摘花を思い上がっているとみている。侍従も大弐の甥との結婚で、自分の意思でなく九州行きに同行することになっていた。

大弐の夫人は、私の言ったとおりじゃないか。 どうしてあんな見る影もない人を 源氏の君が奥様の一人だとお思いになるものかね、 仏様だって罪の軽い者ほどよく導いてくださるのだ。 手もつけられないほどの貧乏女でいて、 いばっていて、 宮様や奥さんのい…

【源氏物語514 第15帖 蓬生14】源氏は帰京して 忠実な人たちに報いたが、末摘花だけは思い出されることがなく、彼女は苦しく切なく一人で泣いてばかりいた。

そのうちに源氏 宥免《ゆうめん》の宣旨が下り、 帰京の段になると、 忠実に待っていた志操の堅さを だれよりも先に認められようとする男女に、 それぞれ有形無形の代償を喜んで源氏の払った時期にも、 末摘花だけは思い出されることもなくて幾月かがそのう…

【源氏物語第513 第15帖 澪標13】末摘花の叔母の夫が九州の大弐に任命された。任地に旅立つ時、叔母は末摘花を伴って行きたがった。

そのうちに叔母の夫が九州の大弐《だいに》に任命された。 娘たちをそれぞれ結婚させておいて、 夫婦で任地へ立とうとする時にもまだ叔母は女王を伴って行きたがって、 「遠方へ行くことになりますと、 あなたが心細い暮らしをしておいでになるのを 捨ててお…

【源氏物語512 第15帖 蓬生12】叔母は貴族の出ながら下の階級に入ったため、蔑まれた腹いせに末摘花の姫君を娘達の女房としたいと思っていた。

初めから地方官級の家に生まれた人は、 貴族をまねて、 思想的にも思い上がった人になっている者も多いのに、 この夫人は貴族の出でありながら、 下の階級へはいって行く運命を生まれながらに持っていたものか、 卑しい性格の叔母君であった。 自身が、家門…

【源氏物語511 第15帖 蓬生11】末摘花には、疎遠になっている 、身分違いの地方官の妻になっている叔母がおり、乳母子の侍従は、時々そこへ行って勤めていた。

侍従という乳母《めのと》の娘などは、 主家を離れないで残っている女房の一人であったが、 以前から半分ずつは勤めに出ていた斎院がおかくれになってからは、 侍従もしかたなしに 女王《にょおう》の母君の妹で、 その人だけが身分違いの地方官の妻になって…

【源氏物語510 第15帖 蓬生10】末摘花の読むのは古いものばかり。今時の婦人のすることはせず 全てに古典的であった。

古くさい書物|棚《だな》から、 唐守《からもり》、藐姑射《はこや》の刀自《とじ》、 赫耶姫《かぐやひめ》物語などを絵に描いた物を引き出して 退屈しのぎにしていた。 古歌などもよい作を選《よ》って、 端書きも作者の名も書き抜いて置いて見るのがおも…

【源氏物語509 第15帖 蓬生9】友達もいず、趣味もない。親戚とも親しもうとすることも、手紙を書くこともない。末摘花は父宮に大切にされた時と同じ心持ちでいた。

古い歌集を読んだり、 小説を見たりすることでつれづれが慰められることにもなるし、 物質的に不足の多い境遇も忍んで行けるのであるが、 末摘花はそんな趣味も持っていない。 それは必ずしもよいことではないが、 暇な女性の間で友情を盛った手紙を書きかわ…