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車の中の源氏は昔をうつらうつらと幻に見ていると、 形もないほどに荒れた大木が 森のような邸《やしき》の前に来た。 高い松に藤がかかって月の光に花のなびくのが見え、 風といっしょにその香がなつかしく送られてくる。 橘《たちばな》とはまた違った感じ…
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