蓬《よもぎ》を少し払わせましてから
おいでになりましたら」
この惟光《これみつ》の言葉を聞いて、
源氏は、
尋ねても われこそ訪《と》はめ 道もなく
深き蓬の もとの心を」
と口ずさんだが、
やはり車からすぐに下《お》りてしまった。
惟光は草の露を馬の鞭《むち》で払いながら案内した。
木の枝から散る雫《しずく》も
秋の時雨《しぐれ》のように荒く降るので、
傘《かさ》を源氏にさしかけさせた。
惟光が、
「木の下露は雨にまされり
(みさぶらひ御笠《みかさ》と申せ宮城野《みやぎの》の)
でございます」
と言う。
源氏の指貫《さしぬき》の裾《すそ》はひどく濡れた。
昔でさえあるかないかであった中門などは影もなくなっている。
家の中へはいるのもむき出しな気のすることであったが、
だれも人は見ていなかった。
🌿静寂の庭 written by のる🌿
🌷第15帖 蓬生(よもぎう)のあらすじはこちら↓
少納言のホームページ 源氏物語&古典 syounagon-web ぜひご覧ください🪷
https://syounagon-web-1.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷