冬にはいればはいるほど頼りなさはひどくなって、
悲しく物思いばかりして暮らす女王だった。
源氏のほうでは故院のための盛んな八講を催して、
世間がそれに湧《わ》き立っていた。
僧などは平凡な者を呼ばずに
学問と徳行のすぐれたのを選んで招じたその物事に、
女王の兄の禅師も出た帰りに妹君を訪《たず》ねて来た。
「源大納言さんの八講に行ったのです。
たいへんな準備でね、
この世の浄土のように法要の場所はできていましたよ。
音楽も舞楽もたいしたものでしたよ。
あの方はきっと仏様の化身《けしん》だろう、
五濁《ごじょく》の世にどうして生まれておいでになったろう」
こんな話をして禅師はすぐに帰った。
普通の兄弟のようには話し合わない二人であるから、
生活苦も末摘花は訴えることができないのである。
それにしてもこの不幸なみじめな女を捨てて置くというのは、
情けない仏様であると末摘花は恨めしかった。
こんな気のした時から、
自分はもう顧みられる望みがないのだろうと
ようやく思うようになった。
🪷🎼夜と静寂(The night and quiet) written by 蒲鉾さちこ🪷
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