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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

【源氏物語 482 第14帖 澪標56】源氏は几帳の間から 六条御息所の娘 前斎宮を見た。気高い美と愛嬌が備わる美しい姫であった。御息所は具合が悪くなり 源氏に帰るよう行って 横になった。

帳台の東寄りの所で身を横たえている人は 前斎宮でおありになるらしい。 几帳の垂《た》れ絹が乱れた間からじっと目を向けていると、 宮は頬杖《ほおづえ》をついて悲しそうにしておいでになる。 少ししか見えないのであるが美人らしく見えた。 髪のかかりよ…

【源氏物語481 第14帖 澪標55】ほのかな灯影から見る六条御息所の姿は絵のように美しい。源氏は哀れでたまらない気がした。

ほのかな灯影《ほかげ》が 病牀《びょうしょう》の几帳をとおしてさしていたから、 あるいは見えることがあろうかと静かに寄って 几帳の綻《ほころ》びからのぞくと、 明るくはない光の中に昔の恋人の姿があった。 美しくはなやかに思われるほどに切り残した…

【源氏物語480 第14帖 澪標54】意外な忖度《そんたく》までもするものであると思ったが、近年の自分は真面目であることは、自然お分かりになるだろうと伝えた。

意外な忖度《そんたく》までもするものであると思ったが 源氏はまた、 「近年の私がどんなにまじめな人間になっているかをご存じでしょう。 昔の放縦な生活の名残をとどめているようにおっしゃるのが残念です。 自然おわかりになってくることでしょうが」 と…

【源氏物語479 第14帖 澪標53】源氏は斎宮を責任持って後見すると伝える。六条御息所は源氏、恋人の列に加えないでほしいと頼む。

「あなたのお言葉がなくてもむろん私は父と変わらない心で 斎宮を思っているのですから、 ましてあなたが御病中にもこんなに御心配になって 私へお話しになることは、 どこまでも責任を持ってお受け合いします。 気がかりになどは少しもお思いになることはあ…

【源氏物語478 第14帖 澪標52】誠意の認められる昔の恋人に御息所は斎宮のことを頼んだ。こう言ったあとで、そのまま気を失うのではないかと思われるほど御息所は泣き続けた。

この源氏の心が御息所に通じたらしくて、 誠意の認められる昔の恋人に御息所は斎宮のことを頼んだ。 「孤児になるのでございますから、 何かの場合に子の一人と思ってお世話をしてくださいませ。 ほかに頼んで行く人はだれもない心細い身の上なのです。 私の…

【源氏物語477 第14帖 澪標51】非常に衰弱の見える昔の恋人のために源氏は泣いた。どれほど愛していたかをこの人に実証して見せることができないままで死別をせねばならぬかと残念でならないのである。

源氏は聞いて、恋人として考えるよりも、 首肯される意見を持つよき相談相手と信じていた その人の生命《いのち》が惜しまれて、 驚きながら六条邸を見舞った。 源氏は真心から御息所をいたわり、 御息所を慰める言葉を続けた。 病床の近くに源氏の座があっ…

【源氏物語476 第14帖 澪標50】にわかに重い病気になって心細くなった御息所は、伊勢という神の境にあって仏教に遠ざかっていた幾年かのことが恐ろしく思われて尼になった。

斎宮がどんなにりっぱな貴女になっておいでになるであろうと、 それを目に見たく思っていた。 御息所は六条の旧邸をよく修繕して あくまでも高雅なふうに暮らしていた。 洗練された趣味は今も豊かで、 よい女房の多い所として風流男の訪問が絶えない。 寂し…

【源氏物語475 第14帖澪標49】斎宮もお変わりになって六条御息所は伊勢から帰ってきた。もう二人に友人以上の交渉があってはならないと御息所は決めていたから、源氏も訪ねて行こうとはしなかった。

この御代《みよ》になった初めに斎宮もお変わりになって、 六条の御息所《みやすどころ》は伊勢《いせ》から帰って来た。 それ以来源氏はいろいろと昔以上の好意を表しているのであるが、 なお若かった日すらも恨めしい所のあった源氏の心の いわば余炎ほど…

【源氏物語474 第14帖 澪標48】京に迎えたいという手紙が来た。今日に行ったのちにも源氏の愛が続くのか、また明石入道も悩む。明石の君は京に出ていく自信がないと返事をした。

近いうちに京へ迎えたいという手紙を持って来たのである。 頼もしいふうに恋人の一人として認められている自分であるが、 故郷を立って京へ出たのちにまで 源氏の愛は変わらずに続くものであろうかと考えられることによって 女は苦しんでいた。 入道も手もと…

【源氏物語473 第14帖 澪標47】明石の君は住吉へ行って御幣を賜った。人数でない身の上を嘆いていたが、源氏の使いが明石にやってきた。

明石の君は源氏の一行が浪速《なにわ》を立った翌日は 吉日でもあったから住吉へ行って御幣《みてぐら》を奉った。 その人だけの願も果たしたのである。 郷里へ帰ってからは以前にも増した物思いをする人になって、 人数《ひとかず》でない身の上を歎《なげ…

【源氏物語472 第14帖 澪標46】小舟を漕がせて集まる遊女に興味を持つ人達を苦々しく思う。恋の相手には尊敬するべき価値が備わってないと興味が持てぬと思う源氏。

遊覧の旅をおもしろがっている人たちの中で 源氏一人は時々暗い心になった。 高官であっても若い好奇心に富んだ人は、 小船を漕がせて集まって来る遊女たちに 興味を持つふうを見せる。 源氏はそれを見てにがにがしい気になっていた。 恋のおもしろさも対象…

【源氏物語471 第14帖 澪標 45】田蓑島《たみのじま》での祓《はら》いの木綿《ゆう》につけて、明石の上の返事は源氏の所へ来た。源氏は人目を遠慮せず会いに行きたいとさえ思った。

数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初《そ》めけん 田蓑島《たみのじま》での 祓《はら》いの木綿《ゆう》につけて この返事は源氏の所へ来たのである。 ちょうど日暮れになっていた。 夕方の満潮時で、 海べにいる鶴《つる》も鳴き声を…

【源氏物語470 第14帖 澪標44】源氏は懐紙に歌を書き 明石の君の船に届けた。明石の君は自身の薄幸さを悲しんでいたところに 少しの消息であるが送られてきたことで感激して泣いた。

源氏は懐紙に書くのであった。 みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける 縁《えに》は深しな 惟光に渡すと、 明石へついて行っていた男で、 入道家の者と心安くなっていた者を使いにして 明石の君の船へやった。 派手な一行が浪速を通って行く…

【源氏物語469 第14帖 澪標43】源氏は淀川の七瀬に祓いの幣が建てられてある堀江を眺め「今はた同じ浪速なる」(身をつくしても逢はんとぞ思ふ)と我知らず口に出た。

こちらの派手な参詣ぶりに畏縮《いしゅく》して 明石の船が浪速のほうへ行ってしまったことも惟光が告げた。 その事実を少しも知らずにいたと 源氏は心で憐《あわれ》んでいた。 初めのことも今日のことも住吉の神が 二人を愛しての導きに違いないと思われて…

【源氏物語468 第14帖 澪標42】こんな時に御幣(みてぐら)を差し上げても神は目にとどめにならぬだろう。祓いのために浪速に船をまわして明石の君の船は去った。

こんな時に自分などが貧弱な御幣《みてぐら》を差し上げても 神様も目にとどめにならぬだろうし、 帰ってしまうこともできない、 今日は浪速《なにわ》のほうへ船をまわして、 そこで祓《はら》いでもするほうがよいと思って、 明石の君の乗った船はそっと住…

【源氏物語467 第14帖 澪標 41】若君の夕霧は衣装を揃えた馬添い童がつけられ 大切に扱われている。華やかな源氏の参詣をみて自分が惨めに思えた。

大臣家で生まれた若君は馬に乗せられていて、 一班ずつを揃《そろ》えの衣裳にした幾班かの 馬添い童《わらわ》がつけられてある。 最高の貴族の子供というものはこうしたものであるというように、 多数の人から大事に扱われて通って行くのを見た時、 明石の…

【源氏物語466 第14帖 澪標40】源氏は童随身(わらわずいじん)を賜る。みずらを紫のぼかしの元結でくくった美しい子ども達であった。明石の君はきまり悪さに源氏を見ることができなかった。

明石に来ていた人たちが昔の面影とは違ったはなやかな姿で 人々の中に混じっているのが船から見られた。 若い顕官たち、殿上役人が競うように凝った姿をして、 馬や鞍《くら》にまで華奢《かしゃ》を尽くしている一行は、 田舎《いなか》の見物人の目を楽し…

【源氏物語465 第14帖 澪標39】加茂の大神を恨んだ右近丞(空蝉の夫 伊予介の息子)は随身を連れ蔵人に、良清は靭負佐になって華やかな赤い袍であった。

さすがによそながら巡り合うだけの宿命に つながれていることはわかるのであったが、 笑って行った侍さえ幸福に輝いて見える日に、 罪障の深い自分は何も知らずに来て 恥ずかしい思いをするのであろうと思い続けると 悲しくばかりなった。 深い緑の松原の中…

【源氏物語464 第14帖 澪標38】源氏は住吉詣をした。華やかで大掛かりな旅になった。丁度その日は、明石の君も参詣で船で住吉に来ていた。源氏の華やかな姿を見て、我が身の上を嘆いた。

この秋に源氏は住吉詣《すみよしもう》でをした。 須磨《すま》、 明石《あかし》で立てた願《がん》を 神へ果たすためであって、 非常な大がかりな旅になった。 廷臣たちが我も我もと随行を望んだ。 ちょうどこの日であった、 明石の君が毎年の例で参詣する…

【源氏物語470 第14帖 澪標44】源氏は懐紙に歌を書き 明石の君の船に届けた。明石の君は自身の薄幸さを悲しんでいたところに 少しの消息であるが送られてきたことで感激して泣いた。

源氏は懐紙に書くのであった。 みをつくし 恋ふるしるしに ここまでも めぐり逢ひける 縁《えに》は深しな 惟光に渡すと、明石へついて行っていた男で、 入道家の者と心安くなっていた者を使いにして明石の君の船へやった。 派手な一行が浪速を通って行くの…

【源氏物語462 第14帖 澪標36】源氏は大后にも好意のある計らいをしていた。兵部卿の宮へは、紫の上に 冷淡であったことを恨めしく思い 昔のような付き合いは無くなった。

皇太后は人生を恨んでおいでになった。 何かの場合に源氏はこの方にも好意のある計らいをして 敬意を表していた。 太后としてはおつらいことであろうとささやく者が多かった。 兵部卿《ひょうぶきょう》親王は 源氏の官位剥奪《はくだつ》時代に冷淡な態度を…

【源氏物語461 第14帖 澪標35】藤壺の宮は太上天皇に準じて女院と遊ばされ、仏法に関係した善行功徳をお営みになることを精励しておいでになった。

入道の宮をまた新たに御母后《ごぼこう》の位にあそばすことは 無理であったから、 太上天皇に準じて女院《にょいん》にあそばされた。 封国が決まり、 院司の任命があって、 これはまた一段立ちまさったごりっぱなお身の上と見えた。 仏法に関係した善行功…

【源氏物語459 第14帖 澪標33】源氏は朧月夜の君を恋しく思っていた。懲りずに危ないことをしかねないほど熱心になっているが、女君は昔のように誘惑に乗らない。

源氏は今も尚侍《ないしのかみ》を恋しく思っていた。 懲りたことのない人のように、 また危《あぶな》いこともしかねないほど熱心になっているが、 環境のために恋には奔放な力を見せた女もつつましくなっていて、 昔のように源氏の誘惑に反響を見せるよう…

源氏物語458 第14帖 澪標32 🌸源氏は、ゆかりの女君達を東の院に住まわせようと考える。設計は面白く 近代的で明るい。趣味の良い地方官に殿舎を割り当てにして作らせた。

源氏は東の院は本邸でなく、 そんな人たちを集めて住ませようと 建築をさせているのであったから、 もし理想どおりにかしずき娘ができてくることがあったら、 顧問格の女として才女の五節などは 必要な人物であると源氏は思っていた。 東の院はおもしろい設…

【源氏物語457 第14帖 澪標31】花散里は「なぜあの時に私は非常に悲しいことだと思ったのでしょう。私などはあなたに幸福の帰って来た今だってもやはり寂しいのでしたのに」と言った。

「なぜあの時に私は非常に悲しいことだと思ったのでしょう。 私などはあなたに幸福の帰って来た今だっても やはり寂しいのでしたのに」 と恨みともなしに おおように言っているのが可憐《かれん》であった。 例のように源氏は言葉を尽くして女を慰めていた。…

【源氏物語456 第14帖 澪標30】何に動揺することもなく長く留守の間を静かに待っていてくれた花散里を、源氏は信頼している。

水鶏《くいな》が近くで鳴くのを聞いて、 水鶏だに 驚かさずば いかにして 荒れたる宿に 月を入れまし なつかしい調子で言うともなくこう言う女が 感じよく源氏に思われた。 どの人にも自身を惹《ひ》く力のあるのを知って 源氏は苦しかった。 「おしなべて …

【源氏物語455 第14帖 澪標29】美しい源氏と月明かりのさす所に出ていることは恥ずかしかったが初めから花散里はそこにいた、この態度が源氏の気持ちを楽にした。

何年かのうちに邸内《やしきうち》はいよいよ荒れて、 すごいような広い住居《すまい》であった。 姉の女御《にょご》の所で話をしてから、 夜がふけたあとで西の妻戸をたたいた。 朧《おぼ》ろな月のさし込む戸口から 艶《えん》な姿で源氏ははいって来た。…

【源氏物語 454 第14帖 澪標28】公務も落ち着いた 五月雨の頃、花散里を訪問することにした。花散里の家の生活を源氏は保護していた。

こんなふうに紫の女王《にょおう》の 機嫌を取ることにばかり追われて、 花散里《はなちるさと》を訪ねる夜も 源氏の作られないのは女のためにかわいそうなことである。 このごろは公務も忙しい源氏であった。 外出に従者も多く従えて出ねばならぬ 身分の窮…

【源氏物語453 第14帖 澪標27】源氏は紫の上に言い訳をしながら、上包みに書かれた字だけを見せた。貴女も恥ずかしいほどの 品の良い手跡である。

「そんなにあなたに悪く思われるようにまで 私はこの女を愛しているのではない。 それはただそれだけの恋ですよ。 そこの風景が目に浮かんできたりする時々に、 私は当時の気持ちになってね、 つい歎息《たんそく》が口から出るのですよ。 なんでも気にする…

【源氏物語452 第14帖 澪標26】乳母は自分の事も源氏が書いてくれているのに満足した。源氏は明石の上の返事を見て 可哀想だと呟いたのを聞いて物思わしそうにした。

乳母は源氏の手紙をいっしょに読んでいて、 人間にはこんなに意外な幸運を持っている人もあるのである、 みじめなのは自分だけであると悲しまれたが、 乳母はどうしているかということも奥に書かれてあって、 源氏が自分に関心を持っていることを知ることが…