【源氏物語796 第26帖 常夏7】自分の手もとへ置いて結婚をさせ、自分の恋人にもしておこう‥深い愛をもって臨めば、夫のあることなどは問題でなく恋は成り立つに違いないと けしからぬことも源氏は思った。
玉鬘の西の対への訪問があまりに続いて人目を引きそうに思われる時は、 源氏も心の鬼にとがめられて間は置くが、 そんな時には何かと用事らしいことをこしらえて手紙が送られるのである。 この人のことだけが毎日の心にかかっている源氏であった。 なぜよけ…
「どうしてだれが私に言ったことかも覚えていないのだが、 あなたのほうの大臣がこのごろほかでお生まれになったお嬢さんを引き取って 大事がっておいでになるということを聞きましたがほんとうですか」 と源氏は弁《べん》の少将に問うた。 「そんなふうに…
「貫川《ぬきがは》の瀬々《せぜ》のやはらだ」 (やはらたまくらやはらかに寝る夜はなくて親さくる妻)と なつかしい声で源氏は歌っていたが「親さくる妻」は少し笑いながら歌い終わったあとの 清掻《すがが》きが非常におもしろく聞かれた。 「さあ弾いて…
月がないころであったから燈籠《とうろう》に灯《ひ》がともされた。 「灯が近すぎて暑苦しい、これよりは篝《かがり》がよい」 と言って、 「篝を一つこの庭で焚《た》くように」 と源氏は命じた。 よい和琴《わごん》がそこに出ているのを見つけて、引き寄…
【源氏物語793 第26帖 常夏4〈とこなつ〉】「中将をきらうことは内大臣として意を得ないことですよ。御自分が尊貴であればあの子も同じ兄妹から生まれた尊貴な血筋というものなのだからね‥」源氏は言った。
「りっぱな青年官吏ばかりですよ。様子にもとりなしにも欠点は少ない。 今日は見えないが右中将は年かさだけあってまた優雅さが格別ですよ。 どうです、あれからのちも手紙を送ってよこしますか。 軽蔑《けいべつ》するような態度はとらないようにしなければ…
内大臣と源氏は大体は仲のよい親友なのであるが、 ずっと以前から性格の相違が原因になったわずかな感情の隔たりはあったし、 このごろはまた中将を侮蔑《ぶべつ》して 失恋の苦しみをさせている大臣の態度に飽き足らないものがあって、 源氏は大臣が癪《し…
イザナギの命とイザナミの命 【天地のはじめ】 ——世界のはじめにまず神々の出現したことを説く。 これらの神名には、それぞれ意味があつて、 その順次に出現することによつて世界ができてゆくことを述べる。 特に最初の三神は、抽象的概念の表現として重視さ…
炎暑の日に源氏は東の釣殿《つりどの》へ出て涼んでいた。 子息の中将が侍しているほかに、親しい殿上役人も数人席にいた。 桂《かつら》川の鮎《あゆ》、加茂《かも》川の石臥《いしぶし》などというような魚を 見る前で調理させて賞味するのであったが、 …
【序文】 過去の時代 ——古事記の成立の前提として、本文に記されている過去のことについて、 まずわれわれが、傳えごとによつて過去のことを知ることを述べ、 續いて歴代の天皇がこれによつて徳教を正したことを述べる。 太の安萬侶によつて代表される古人が…
内大臣は腹々《はらばら》に幾人もの子があって、 大人になったそれぞれの子息の人柄にしたがって 政権の行使が自由なこの人は皆適した地位につかせていた。 女の子は少なくて后の競争に負け失意の人になっている女御《にょご》と 恋の過失をしてしまった雲…