と大弐《だいに》夫人に小言《こごと》を言われて、
侍従は夢中で車に乗ってしまった。
そしてあとばかりが顧みられた。
困りながらも長い間離れて行かなかった人が、
こんなふうにして別れて行ったことで、
女王はますます心細くなった。
だれも雇い手のないような老いた女房までが、
「もっともですよ。どうしてこのままいられるものですか。
私たちだってもう我慢ができませんよ」
こんなことを言って、
ほかへ勤める手蔓《てづる》を捜し始めて、
ここを出る決心をしたらしいことを言い合うのを聞くことも
末摘花の身にはつらいことであった。
十一月になると雪や霙《みぞれ》の日が多くなって、
ほかの所では消えている間があっても、
ここでは丈の高い枯れた雑草の蔭《かげ》などに
深く積もったものは量《かさ》が高くなるばかりで
越《こし》の白山《はくさん》をそこに置いた気がする庭を、
今はもうだれ一人出入りする下男もなかった。
こんな中に
つれづれな日を送るよりしかたのない末摘花の女王であった。
泣き合い笑い合うこともあった侍従がいなくなってからは、
夜の塵《ちり》のかかった帳台の中で
ただ一人寂しい思いをして寝た。
🪷秋雨と共に(Autumn rain with you) by 蒲鉾さちこ🪷
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