私の心だけは変わらずにあなたを思っていたのですが、
何ともあなたが言ってくださらないものだから、
恨めしくて、
今までためすつもりで冷淡を装っていたのですよ。
しかし、三輪《みわ》の杉《すぎ》ではないが、
この前の木立ちを目に見ると素通りができなくてね、
私から負けて出ることにしましたよ」
几帳《きちょう》の垂《た》れ絹を少し手であけて見ると、
女王は例のようにただ恥ずかしそうにすわっていて、
すぐに返辞はようしない。
こんな住居《すまい》にまで訪ねて来た源氏の志の
身にしむことによってやっと力づいて何かを少し言った。
「こんな草原の中で、
ほかの望みも起こさずに待っていてくだすったのだから
私は幸福を感じる。
またあなただって、
あなたの近ごろの心持ちもよく聞かないままで、
自分の愛から推して、
愛を持っていてくださると信じて訪ねて来た私を何と思いますか。
今日まであなたに苦労をさせておいたことも、
私の心からのことでなくて、
その時は世の中の事情が悪かったのだと思って
許してくださるでしょう。
今後の私が誠実の欠けたようなことをすれば、
その時は私が十分に責任を負いますよ」
などと、
それほどに思わぬことも、
女を感動さすべく源氏は言った。
🌿落ちる葉、移りゆく秋の中で(Fallen leaves,Shifting of the autumn)
written by 蒲鉾さちこ🌿
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