またある朝、 清盛が寝床から起きぬけて妻戸を押し開いて小庭の内を眺めると、 こはいかに、死人の髑髏《どくろ》が小庭を埋めつくしている。 やや、奇怪、と目を見張れば、その髑髏は上になり、下になり、 骨と骨のふれ合う乾いた音が不気味に小庭に満ちみ…
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【序文】 過去の時代 ——古事記の成立の前提として、本文に記されている過去のことについて、 まずわれわれが、傳えごとによつて過去のことを知ることを述べ、 續いて歴代の天皇がこれによつて徳教を正したことを述べる。 太の安萬侶によつて代表される古人が…
【古事記2 古事記の企画】稗田の阿禮という人があり、年は二十八、人柄が賢く、目で見たものは口で読み伝え、耳で聞いたものはよく記憶しました。そこで阿禮に仰せ下され、帝紀と本辭とを讀み習わしめられました。
古事記の企画 ——前半は天武天皇の御事蹟と徳行について述べる。 後半、古來の伝えごとに關心をもたれ、 これをもつて國家經營の基本であるとなし、 これを正して稗田の阿禮をして誦み習わしめられたが、 まだ書物とするに至らなかつたことを記す。—— 飛鳥《…
【源氏物語 749 第23帖 初音8】聡明さは明石の魅力でもあった。源氏は心が惹《ひ》かれて、新春の第一夜をここに泊まることは紫夫人を腹だたせることになるかもしれぬと思いながら、そのまま寝てしまった。
珍しや花のねぐらに木づたひて谷の古巣をとへる鶯 やっと聞き得た鶯の声というように悲しんで書いた横にはまた 「梅の花咲ける岡辺《をかべ》に家しあれば乏しくもあらず鶯の声」 と書いて、みずから慰めても書かれてある。 源氏はこの手習い紙をながめなが…
【源氏物語 748 第23帖 初音7〈はつね〉】渡殿の戸をあけた時から、もう御簾の中の薫香《たきもの》のにおいが立ち迷っていて、気高い艶《えん》な世界へ踏み入る気がした。居間に明石の姿は見えなかった。
〜日の暮れ方に源氏は明石《あかし》の住居《すまい》へ行った。 居間に近い渡殿《わたどの》の戸をあけた時から、 もう御簾《みす》の中の薫香《たきもの》のにおいが立ち迷っていて、 気高い艶《えん》な世界へ踏み入る気がした。居間に明石の姿は見えなか…
入道は愛馬を持っていた。 相模国の住人、大庭《おおばの》三郎|景親《かげちか》が 関東八カ国随一の馬として献上したもので、黒い毛並だが額が少し白い、 そこで望月《もちづき》と呼ばれた名馬である。 清盛はそれが気に入って第一の厩《うまや》に入れ…
労をしてきた間に少し少なくなった髪が、 肩の下のほうでやや細くなりさらさらと分かれて着物の上にかかっているのも、 かえってあざやかな清さの感ぜられることであった。 今はこうして自分の庇護のもとに置くがあぶないことであったと 以前のことを深く思…
平家が福原へ都をうつしてから、 どうしたことか清盛は妖怪 変化《へんげ》の類を見るようになった。 さして体が悪いというのではないが、胸騒ぎがする。 夢を見るたびにうなされる。 朝起きてみると汗をしたたるほどかいていることが多くなった。 あるとき…
【源氏物語 746 第23帖 初音5】源氏は西の対の玉鬘の君の所に。山吹の色の細長が似合う顔と源氏の見立てたとおりの派手な美人は、暗い陰影というものは、どこからも見いだせない輝かしい容姿を持っていた。
「私のような男でなかったら愛をさましてしまうかもしれない衰退期の顔を、 化粧でどうしようともしないほど私の心が信じられているのがうれしい。 あなたが軽率な女で、ひがみを起こして別れて行っていたりしては、 私にこの満足は与えてもらえなかったでし…
「この返事は自分でなさい。きまりが悪いなどと気どっていてよい相手でない」 源氏はこう言いながら、硯《すずり》の世話などをやきながら姫君に書かせていた。 かわいい姿で、毎日見ている人さえだれも見飽かぬ気のするこの人を、 別れた日から今日まで見せ…
うす氷 解けぬる池の 鏡には 世にたぐひなき 影ぞ並べる これほど真実なことはない。 二人は世に珍しい麗質の夫婦である。 曇りなき 池の鏡に よろづ代を すむべき影ぞ しるく見えける と夫人は言った。 どの場合、何の言葉にもこの二人は長く変わらぬ愛を誓…
【源氏物語 743 第23帖 初音2〈はつね〉】夕方前になり、源氏が他の夫人たちへ年始の挨拶に出かけようとして、念入りに身なりを整え化粧をしたのを見ることは実際これが幸福でなくて何であろうと思われた。
鏡餠《かがみもち》なども取り寄せて、 今年中の幸福を祈るのに興じ合っている所へ主人の源氏がちょっと顔を見せた。 懐中手《ふところで》をしていた者が急に居ずまいを直したりしてきまりを悪がった。 「たいへんな御祝儀なのだね、 皆それぞれ違ったこと…
新春を迎えた六条院は、この世の極楽浄土の如く麗らかで素晴らしかった。 源氏は春の町で紫の上と歌を詠み交わし、新年を寿いだ。 紫の上の下で養育されている明石の姫君に生母明石の御方から贈り物と和歌が届き、 源氏は娘との対面も叶わぬ御方を哀れに思う…
新春第一日の空の完全にうららかな光のもとには、 どんな家の庭にも雪間の草が緑のけはいを示すし、 春らしい霞《かすみ》の中では、 芽を含んだ木の枝が生気を見せて煙っているし、 それに引かれて人の心ものびやかになっていく。 まして玉を敷いたと言って…
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「いろんな歌の手引き草とか、 歌に使う名所の名とかの集めてあるのを始終見ていて、 その中にある言葉を抜き出して使う習慣のついている人は、 それよりほかの作り方ができないものと見える。 常陸《ひたち》の親王のお書きになった 紙屋紙《かんやがみ》の…
【源氏物語740 第22帖 玉鬘40】末摘花女王の手紙は香の薫りのする檀紙の、少し年数物になって厚く膨れたのへ、「どういたしましょう、 いただき物はかえって私の心を暗くいたします。」と書かれてあった。
末摘花女王《すえつむはなにょおう》の手紙は 香の薫《かお》りのする檀紙《だんし》の、 少し年数物になって厚く膨《ふく》れたのへ、 「どういたしましょう、 いただき物はかえって私の心を暗くいたします。」 『着て見ればうらみられけりから衣《ごろも》…
色に出して見せないのであるが、 源氏はそのほうを見た時に、 夫人の心の平静でないのを知った。 「もう着る人たちの容貌《きりょう》を考えて 着物を選ぶことはやめることにしよう、 もらった人に腹をたてさせるばかりだ。 どんなによくできた着物でも物質…
夫人もいっしょに見ていて、 「皆よくできているのですから、 お召しになるかたのお顔によく似合いそうなのを 見立てておあげなさいまし。 着物と人の顔が離れ離れなのはよくありませんから」 と言うと、源氏は笑って、 「素知らぬ顔であなたは着る人の顔を…
【源氏物語737 第22帖 玉鬘37】 新年の室内装飾、春の衣裳を配る時にも、源氏は玉鬘を尊貴な夫人らと同じに取り扱った。女王は裁縫係の所にでき上がっている物も、手もとで作らせた物も皆 源氏に見せた。
年末になって、新年の室内装飾、春の衣裳を配る時にも、 源氏は玉鬘を尊貴な夫人らと同じに取り扱った。 どんなに思いのほかによい趣味を知った人と見えても、 またどんなまちがった物の取り合わせをするかもしれぬという 不安な気持ちもあって、 玉鬘のほう…
源氏は子息の中将にも、こうこうした娘を呼び寄せたから、 気をつけて交際するがよいと言ったので、 中将はすぐに玉鬘の御殿へ訪ねて行った。 「つまらない人間ですが、 こんな弟がおりますことを御念頭にお置きくださいまして、 御用があればまず私をお呼び…
「野蛮な地方に長くいたのだから、 気の毒なものに仕上げられているだろうと私は軽蔑していたが、 こちらがかえって恥ずかしくなるほどでしたよ。 娘にこうした麗人を持っているということを 世間へ知らせるようにして、 よくおいでになる兵部卿《ひょうぶき…
年を数えてみて、 「親子であってこんなに長く逢えなかったというようなことは 例もないでしょう。恨めしい運命でしたね。 もうあなたは少女のように 恥ずかしがってばかりいてよい年でもないのですから、 今日までの話も私はしたいのに、 なぜあなたは黙っ…
【源氏物語733 第22帖 玉鬘33】「灯があまりに暗い。恋人の来る夜のようではないか。 親の顔は見たいものだと聞いているが。 貴女はそう思いませんか」と言って、源氏は几帳を少し横のほうへ押しやった。
源氏の通って来る所の戸口を右近があけると、 「この戸口をはいる特権を私は得ているのだね」 と笑いながらはいって、縁側の前の座敷へすわって、 「灯があまりに暗い。恋人の来る夜のようではないか。 親の顔は見たいものだと聞いているがこの明りではどう…
「母親だった人はとても善良な女でしたよ。 あなたも優しい人だから安心してお預けすることができるのです」 などと源氏が言った。 「母親らしく世話を焼かせていただくことも これまではあまり少なくて退屈でしたから、 いいことだと思います、ごいっしょに…
姫君が六条院へ移って行くことは簡単にもいかなかった。 まずきれいな若い女房と童女を捜し始めた。 九州にいたころには相当な家の出でありながら、 田舎へ落ちて来たような女を見つけ次第に雇って、 姫君の女房に付けておいたのであるが、 脱出のことがにわ…
「困るね。生きている人のことでは私のほうから 進んで聞いておいてもらわねばならないこともありますがね。 たとえこんな時にでも昔のそうした思い出を話すのは あなたが特別な人だからですよ」 こう言っている源氏には故人を思う情に堪えられない様子が見…
【源氏物語729 第22帖 玉鬘29】姫君自身は、実父の手から少しの贈り物でも得られたのなら嬉しいであろうが、知らない人と交渉を始めようなどとは意外であると贈り物を受けることを苦しく思うふうであった。
姫君自身は、こんなりっぱな品々でなくても、 実父の手から少しの贈り物でも得られたのならうれしいであろうが、 知らない人と交渉を始めようなどとは意外であるというように、 それとなく言って、 贈り物を受けることを苦しく思うふうであったが、 右近は母…
「短いはかない縁だったと、私はいつもあの人のことを思っている。 この家に集まって来ている奥さんたちもね、 あの時にあの人を思ったほどの愛を感じた相手でもなかったのが、 皆あの人のように短命でないことだけで、 私の忘れっぽい男でないのを見届けて…