西の妻戸の開いた口からさしてきて、
その向こうにあるはずの廊もなくなっていたし、
廂《ひさし》の板もすっかり取れた家であるから、
明るく室内が見渡された。
昔のままに飾りつけのそろっていることは、
忍ぶ草のおい茂った外見よりも風流に見えるのであった。
昔の小説に親の作った堂を毀《こぼ》った話もあるが、
これは親のしたままを長く保っていく人として
心の惹《ひ》かれるところがあると源氏は思った。
この人の差恥《しゅうち》心の多いところも
さすがに貴女《きじょ》であるとうなずかれて、
この人を一生風変わりな愛人と思おうとした考えも、
いろいろなことに紛れて忘れてしまっていたころ、
この人はどんなに恨めしく思ったであろうと哀れに思われた。
ここを出てから源氏の訪ねて行った花散里も、
美しい派手《はで》な女というのではなかったから、
末摘花の醜さも
比較して考えられることがなく済んだのであろうと思われる。
🪷夜と静寂(The night and quiet)written by 蒲鉾さちこ🪷
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