第21帖 乙女(おとめ)源氏物語
それに続いてまた入学の式もあった。 東の院の中に若君の勉強部屋が設けられて、 まじめな学者を一人つけて源氏は学ばせた。 若君は大宮の所へもあまり行かないのであった。 夜も昼もおかわいがりにばかりなって、 いつまでも幼児であるように宮はお扱いにな…
式場の席が足りないために、 あとから来て帰って行こうとする大学生のあるのを聞いて、 源氏はその人々を別に釣殿《つりどの》のほうでもてなした。 贈り物もした。 式が終わって退出しようとする博士と詩人を また源氏はとどめて詩を作ることにした。 高官…
若君の師から字《あざな》をつけてもらう式は 東の院ですることになって、 東の院に式場としての設けがされた。 高官たちは皆この式を珍しがって参会する者が多かった。 博士たちが晴れがましがって気おくれもしそうである。 「遠慮をせずに定《きま》りどお…
源氏が言うのを、聞いておいでになった宮は 歎息《たんそく》をあそばしながら、 「ごもっともなお話だと思いますがね、 右大将などもあまりに変わったお好みだと不審がりますし、 子供もね、残念なようで、 大将や左衛門督《さえもんのかみ》などの息子の、…
「ただ今わざわざ低い位に置いてみる必要もないようですが、 私は考えていることがございまして、 大学の課程を踏ませようと思うのでございます。 ここ二、三年をまだ元服以前とみなしていてよかろうと存じます。 朝廷の御用の勤まる人間になりますれば 自然…
第21帖 乙女3です 故太政大臣家で生まれた源氏の若君の 元服の式を上げる用意がされていて、 源氏は二条の院で行なわせたく思うのであったが、 祖母の宮が御覧になりたく思召すのがもっともで、 そうしたことはお気の毒に思われて、 やはり今までお育てにな…
「源氏の君というと、いつも美しい少年が思われるのだけれど、 こんなに大人らしい親切を見せてくださる。 顔がきれいな上に心までも並みの人に違ってでき上がっているのだね」 とおほめになるのを、若い女房らは笑っていた。 西の女王とお逢いになる時には…
春になって女院の御一周年が過ぎ、 官人が喪服を脱いだのに続いて四月の更衣期になったから、 はなやかな空気の満ち渡った初夏であったが、 前斎院はなお寂しくつれづれな日を送っておいでになった。 庭の桂《かつら》の木の若葉がたてるにおいにも若い女房…
光源氏33歳の夏から35歳冬の話。 源氏の息子夕霧が、12歳で元服を迎えた。 しかし源氏は夕霧を敢えて優遇せず、六位にとどめて大学に入れた。 同じ年、源氏の養女斎宮女御が冷泉帝の中宮に立后する。 源氏は太政大臣に、右大将(頭中将)は内大臣になった。 …