そのうちに源氏 宥免《ゆうめん》の宣旨が下り、
帰京の段になると、
忠実に待っていた志操の堅さを
だれよりも先に認められようとする男女に、
それぞれ有形無形の代償を喜んで源氏の払った時期にも、
末摘花だけは思い出されることもなくて幾月かがそのうちたった。
もう何の望みもかけられない。
長い間不幸な境遇に落ちていた源氏のために、
その勢力が宮廷に復活する日があるようにと
念じ暮らしたものであるのに、
賤《いや》しい階級の人でさえも
源氏の再び得た輝かしい地位を喜んでいる時にも、
ただよそのこととして
聞いていねばならぬ自分でなければならなかったか、
源氏が京から追われた時には
自分一人の不幸のように悲しんだが、
この世はこんな不公平なものであるのかと思って
末摘花は恨めしく苦しく切なく一人で泣いてばかりいた。
🪻🎼道すがら written by ゆうり🪻
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