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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

第十三帖 明石(あかし)源氏物語

【源氏物語398 第13帖 明石60】明石の君は恋愛も結婚も考えていたよりも悲しいものであると思いながらも 訪れも間遠な源氏の不快を買う言動もしない。

この当座幾日は山手の家へ行く気もしなかった。 女は長い途絶えを見て、 この予感はすでに初めからあったことであると歎《なげ》いて、 この親子の間では最後には海へ身を投げればよいという言葉が 以前によく言われたものであるが、 いよいよそうしたいほど…

【源氏物語397 第13帖 明石59】紫の上からの返事は無邪気な可憐なものであったが、うらなくも 思ひけるかな 契りしを 松より波は 越えじものぞ その歌から悔しさも感じられる。

「誓ひしことも」 (忘れじと誓ひしことをあやまたば三笠《みかさ》の山の神もことわれ) という歌のように私は信じています。 と書いて、また、 何事も、 しほしほと 先《ま》づぞ泣かるる かりそめの みるめは海人《あま》の すさびなれども と書き添えた…

【源氏物語396 第13帖 明石58】源氏は紫の上に「またここでよけいな夢を一つみました」と、明石の君との結婚のことを手紙で伝えた。

新しい恋人は得ても 女王へ焦れている心は慰められるものでもなかったから、 平生よりもまた情けのこもった手紙を源氏は京へ書いたのであるが、 奥に今度のことを書いた。 私は過去の自分のしたことではあるが、 あなたを不快にさせたつまらぬいろいろな事件…

【源氏物語395 第13帖 明石57】願いが成就したもの物思いをする明石入道。源氏は紫の上のことを思って後悔をする源氏。

入道からいえば事が成就しているのであるが、 その境地で新しく物思いをしているのが憐《あわ》れであった。 二条の院の女王《にょおう》にこの噂が伝わっては、 恋愛問題では嫉妬する価値のあることでないとわかっていても、 秘密にしておく自分の態度を恨…

【源氏物語394 第13帖 明石56】源氏の訪れも時々である。娘は自尊心を傷つけられ憂う。入道は仏勤めも放り出し源氏の君が通うことだけを大事と思っている。

その翌日は手紙を送るのに以前よりも人目がはばかられる気もした。 源氏の心の鬼からである。 入道のほうでも公然のことにはしたくなくて、 結婚の第二日の使いも、 そのこととして派手に扱うようなことはしなかった。 こんなことにも娘の自尊心は傷つけられ…

【源氏物語393 第13帖 明石55】明石の君と結ばれたのも前生の因縁であろう。娘に誠意のある約束をした源氏は朝にならぬうちに帰った。

源氏自身の内に たいした衝動も受けていないでこうなったことも、 前生の因縁であろうと思うと、 そのことで愛が湧《わ》いてくるように思われた。 源氏から見て近まさりのした恋と言ってよいのである。 平生は苦しくばかり思われる秋の長夜もすぐ明けていく…

【源氏物語392 第13帖 明石54】源氏が入ってこようなどと予期しなかったた娘は、部屋に入り戸を開けられないようにしたが、娘は妻となった。やや背が高い気高い様子の人だった

源氏がそこへはいって来ようなどとは 娘の予期しなかったことであったから、 それが突然なことでもあって、 娘は立って近い一つの部屋へはいってしまった。 そしてどうしたのか、 戸はまたあけられないようにしてしまった。 源氏はしいてはいろうとする気に…

【源氏物語391 第13帖 明石53】源氏は明石の君に琴を聞かせてほしいと言った。歌を交わした時 ほのかにいう様子は六条御息所に似ている。

「今音が少ししたようですね。 琴だけでも私に聞かせてくださいませんか」 とも源氏は言った。 むつ言を 語りあはせん 人もがな うき世の夢も なかば覚《さ》むやと 明けぬ夜に やがてまどへる 心には 何《いづ》れを夢と 分《わ》きて語らん 前のは源氏の歌…

【源氏物語390 第13帖 明石52】源氏は言葉をつくす。几帳の紐が動いて触れた時に琴の緒が鳴った。娘の美しい室内の生活ぶりが想像され源氏はますます熱していく。

力で勝つことは初めからの本意でもない、 女の心を動かすことができずに帰るのは 見苦しいとも思う源氏が追い追いに熱してくる言葉などは、 明石の浦でされることが少し場所違いで もったいなく思われるものであった。 几帳《きちょう》の紐《ひも》が動いて…

【源氏物語389 第13帖 明石51】娘にものを言いかけたが よそよそしくしか答えない。現在の自分をあなどっているのではと焦慮の中ではこんなことも思われた。

月のさし込んだ妻戸が少しばかり開かれてある。 そこの縁へ上がって、源氏は娘へものを言いかけた。 これほどには接近して逢おうとは思わなかった娘であるから、 よそよそしくしか答えない。 貴族らしく気どる女である。 もっとすぐれた身分の女でも 今日ま…

【源氏物語388 第13帖 明石50】娘の家は三昧堂が近くて、そこで鳴らす鐘の音が松風に響き合い 秋の虫が鳴いている。

山手の家は 林泉の美が浜の邸《やしき》にまさっていた。 浜の館《やかた》は派手に作り、 これは幽邃《ゆうすい》であることを主にしてあった。 若い女のいる所としてはきわめて寂しい。 こんな所にいては人生のことが 皆身にしむことに思えるであろうと源…

【源氏物語386 第13帖 明石48】明石入道は妻にも弟子にも告げずに結婚の支度をした。13日の月の夜、源氏の館に「あたら夜の」と書いた迎えの手紙を源氏に送った。

源氏は、 「この秋の季節のうちにお嬢さんの音楽を 聞かせてほしいものです。 前から期待していたのですから」 などとよく入道に言っていた。 入道はそっと婚姻の吉日を暦で調べさせて、 まだ心の決まらないように言っている妻を無視して、 弟子にも言わずに…

【源氏物語385 第13帖 明石47】親達は長い間祈っていたことが現実になろうとする今、源氏の心も娘の運命も考えに入れずにいたと 二の足を踏み 煩悶する。

親たちは長い間祈ったことの 事実になろうとする時になったことを知りながら、 結婚をさせて源氏の愛の得られなかった時はどうだろうと、 悲惨な結果も想像されて、 どんなりっぱな方であっても、 その時は恨めしいことであろうし、 悲しいことでもあろう、 …

【源氏物語384 第13帖 明石46】明石の君は、手紙のやり取りをし 有名な琴の音も聞く事も叶い これ以上は望みたくない。源氏との結婚の夢など見ていないのである。

長い間 噂《うわさ》だけを聞いていて、 いつの日にそうした方を 隙見《すきみ》することができるだろうと、 はるかなことに思っていた方が 思いがけなくこの土地へおいでになって、 隙見ではあったがお顔を見ることができたし、 有名な琴の音を聞くこともか…

【源氏物語 383 第13帖 明石45】不釣り合いの結婚により 親達も辛い思いをするだろう‥手紙を交わすことを許されるということが幸福である。思慮深い明石の君。

不つりあいの結婚をありがたいことのように思って、 成り立たせようと心配している親たちも、 自分が娘でいる間はいろいろな空想も作れていいわけなのであるが、 そうなった時から親たちは別なつらい苦しみをするに違いない。 源氏が明石に滞留している間だ…

【源氏物語382 第13帖 明石44】秋になり源氏も寂しさを感じる。明石入道に娘をこちらに寄越すようにいうが 娘はそうしたことができぬ自尊心があった。

明石ではまた 秋の浦風の烈しく吹く季節になって、 源氏もしみじみ独棲みの寂しさを感じるようであった。 入道へ娘のことをおりおり言い出す源氏であった。 「目だたぬようにしてこちらの邸《やしき》へ よこさせてはどうですか」 こんなふうに言っていて、 …

【源氏物語381 第13帖 明石43】朱雀帝は源氏を許し本官に復させようと仰せであるが、大后はあくまで賛成をあそばないままで月日が経つ。

「私はやはり源氏の君が犯した罪もないのに、 官位を剥奪《はくだつ》されているようなことは、 われわれの上に報いてくることだろうと思います。 どうしても本官に復させてやらねばなりません」 このことをたびたび帝は太后へ仰せになるのであった。 「それ…

【源氏物語380 第13帖 明石42】帝は目をお患いになり、大后の父の大臣も亡くなった。大后も寝付くことも多くなり 帝は御心痛をあそばされた。

太后へお話しになると、 「雨などが降って、天気の荒れている夜などというものは、 平生神経を悩ましていることが 悪夢にもなって見えるものですから、 それに動かされたと 外へ見えるようなことはなさらないほうがよい。 軽々しく思われます」 と母君は申さ…

【源氏物語379 第13帖 明石41】日本は天変地異に見舞われた。朱雀帝の夢に先帝が現れ いろいろ仰せになった。

この年は日本に天変地異ともいうべきことがいくつも現われてきた。 三月十三日の雷雨の烈《はげ》しかった夜、 帝《みかど》の御夢に 先帝が清涼殿の階段《きざはし》の所へお立ちになって、 非常に御機嫌の悪い顔つきでおにらみになったので、 帝がかしこま…

【源氏物語378 第13帖 明石40】紫の上を恋しく思うげんじ。そっとこちらに迎えようとも思うが、やはり忍ぶ方が良いのであるとして恋しさを抑えていた。

何ほども遠くなってはいないのであるが、 ともかくも須磨の関が中にあることになってからは、 京の女王がいっそう恋しくて、 どうすればいいことであろう、 短期間の別れであるとも思って捨てて来たことが残念で、 そっとここへ迎えることを実現させてみよう…

【源氏物語377 第13帖 明石39】源氏は心惹かれるものの 良清から横取りする形になるのは可哀想だと思う。とはいえ娘の方から接近しようとしない。

相手をするに不足のない思い上がった娘であることがわかってきて、 源氏の心は自然 惹かれていくのであるが、 良清《よしきよ》が 自身の縄張りの中であるように言っていた女であったから、 今眼前横取りする形になることは彼にかわいそうであると なお躊躇…

【源氏物語376 第13帖 明石38】明石入道の娘は京の貴女にあまり劣らないほど上手であった。源氏は京の生活が思い出され楽しかった。

思ふらん 心のほどや やよいかに まだ見ぬ人の 聞きか悩まん 手も書き方も京の貴女にあまり劣らないほど上手であった。 こんな女の手紙を見ていると京の生活が思い出されて 源氏の心は楽しかったが、 続いて毎日手紙をやることも人目がうるさかったから、 二…

【源氏物語375 13帖 明石37】源氏は代筆の返事は要らないと書いて手紙を書いた。明石の娘は入道に責められて香のにおいの沁んだ紙に返事を書いた。

翌日また源氏は書いた。 代筆のお返事などは必要がありません。と書いて、 いぶせくも 心に物を 思ふかな やよやいかにと 問ふ人もなみ 言うことを許されないのですから。 今度のは柔らかい薄様《うすよう》へはなやかに書いてやった。 若い女がこれを不感覚…

【源氏物語374 第13帖 明石36】父親の明石入道の代筆の返事が来た。返事を書かぬ娘に軽い反感が起こった。

もったいないお手紙を得ましたことで、 過分な幸福をどう処置してよいかわからぬふうでございます。 それをこんなふうに私は見るのでございます。 眺むらん 同じ雲井を 眺むるは 思ひも同じ 思ひなるらん だろうと私には思われます。 柄にもない風流気を私の…

【源氏物語 373 第13帖 明石35】明石入道の娘は、身分差を悲しみ 源氏に返事を書こうとしない。代わりに父親の入道が返事を書いた。

人知れずこの音信を待つために山手の家へ来ていた入道は、 予期どおりに送られた手紙の使いを大騒ぎしてもてなした。 娘は返事を容易に書かなかった。 娘の居間へはいって行って勧めても娘は父の言葉を聞き入れない。 返事を書くのを恥ずかしくきまり悪く思…

【源氏物語372 第13帖 明石34】源氏は明石入道のいる山手の家に手紙を持たせてやることにした。優れた女がいるのかもしれないと心遣いをしながら手紙を書いた。

やっと思いがかなった気がして、 涼しい心に入道はなっていた。 その翌日の昼ごろに 源氏は山手の家へ手紙を持たせてやることにした。 ある見識をもつ娘らしい、 かえってこんなところに 意外なすぐれた女がいるのかもしれないからと思って、 心づかいをしな…

【源氏物語371 第13帖 明石33】明石入道は、源氏に娘についていろいろ話す。明石入道の愛嬌のある部分も見えた。

「ひとり寝は 君も知りぬや つれづれと 思ひあかしの うら寂しさを 私はまた長い間口へ出してお願いすることができませんで 悶々《もんもん》としておりました」 こう言うのに身は慄《ふる》わせているが、 さすがに上品なところはあった。 「寂しいと言って…

【源氏物語370 第13帖 明石32】明石入道から一人娘の話をされた源氏は、深い因縁があるのではないかと言う。その言葉に明石入道は喜ぶ。

「冤罪《えんざい》のために、 思いも寄らぬ国へ漂泊《さまよ》って来ていますことを、 前生に犯したどんな罪によってであるかと わからなく思っておりましたが、 今晩のお話で考え合わせますと、 深い因縁によってのことだったとはじめて気がつかれます。 …

【源氏物語369 第13帖 明石31】大臣の子息の明石入道。地方で暮らす中、娘は希望であった。良い縁がなく親に死に別れたら海に身を投げよと遺言した。

私自身は前生の因縁が悪くて、 こんな地方人に成り下がっておりましても、 親は大臣にもなった人でございます。 自分はこの地位に甘んじていましても 子はまたこれに準じたほどの者にしかなれませんでは、 孫、曾孫《そうそん》の末は 何になることであろう…

【源氏物語368 第13帖 明石30】明石入道は住吉の神に春秋に参詣し昼夜仏前のお勤めをし 、自分の極楽往生を差し置いて 娘のよい結婚を祈っていると源氏に話す。

「申し上げにくいことではございますが、 あなた様が思いがけなくこの土地へ、 仮にもせよ移っておいでになることになりましたのは、 もしかいたしますと、 長年の間老いた法師がお祈りいたしております神や仏が 憐《あわれ》みを一家におかけくださいまして…