この当座幾日は山手の家へ行く気もしなかった。
女は長い途絶えを見て、
この予感はすでに初めからあったことであると歎《なげ》いて、
この親子の間では最後には海へ身を投げればよいという言葉が
以前によく言われたものであるが、
いよいよそうしたいほどつらく思った。
年取った親たちだけをたよりにして、
いつ人並みの娘のような幸福が得られるものとも知れなかった過去は、
今に比べて懊悩《おうのう》の片はしも知らない自分だった。
世の中のことはこんなに苦しいものなのであろうか、
恋愛も結婚も処女の時に考えていたより悲しいものであると、
女は心に思いながらも源氏には平静なふうを見せて、
不快を買うような言動もしない。
🪷🎼ふりつむ悲しみ written by のる🪷
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