二日ほどしてまた内大臣は大宮を御訪問した。
こんなふうにしきりに出て来る時は宮の御機嫌がよくて、
おうれしい御様子がうかがわれた。
形式は尼になっておいでになる方であるが、
髪で額を隠して、お化粧もきれいにあそばされ、
はなやかな小袿《こうちぎ》などにもお召しかえになる。
子ながらも晴れがましくお思われになる大臣で、
ありのままのお姿ではお逢いにならないのである。
内大臣は不機嫌な顔をしていた。
「こちらへ上がっておりましても
私は恥ずかしい気がいたしまして、
女房たちはどう批評をしていることだろうかと心が置かれます。
つまらない私ですが、生きておりますうちは始終伺って、
物足りない思いをおさせせず、
私もその点で満足を得たいと思ったのですが、
不良な娘のためにあなた様を
お恨めしく思わずにいられませんようなことができてまいりました。
そんなに真剣にお恨みすべきでないと、
自分ながらも心をおさえようとするのでございますが、
それができませんで」
大臣が涙を押しぬぐうのを御覧になって、
お化粧あそばした宮のお顔の色が変わった。
涙のために白粉《おしろい》が落ちてお目も大きくなった。
「どんなことがあって、
この年になってからあなたに恨まれたりするのだろう」
と宮の仰せられるのを聞くと、さ
すがにお気の毒な気のする大臣であったが続いて言った。
🪷🎼ただ僕は、善かれと思って written by 秦暁
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