若君の師から字《あざな》をつけてもらう式は
東の院ですることになって、
東の院に式場としての設けがされた。
高官たちは皆この式を珍しがって参会する者が多かった。
博士たちが晴れがましがって気おくれもしそうである。
「遠慮をせずに定《きま》りどおりに厳格にやってください」
と源氏から言われたので、しいて冷静な態度を見せて、
借り物の衣裳《いしょう》の身に合わぬのも恥じずに、
顔つき、声づかいに学者の衒気《げんき》を見せて、
座にずっと並んでついたのははなはだ異様であった。
若い役人などは笑いがおさえられないふうである。
しかもこれは笑いやすいふうではない、
落ち着いた人が
酒瓶《しゅへい》の役に選ばれてあったのである。
すべてが風変わりである。
右大将、民部卿などが丁寧に杯を勧めるのを見ても
作法に合わないと叱り散らす、
「御接待役が多すぎてよろしくない。
あなたがたは今日の学界における私を知らずに
朝廷へお仕えになりますか。まちがったことじゃ」
などと言うのを聞いてたまらず笑い出す人があると、
「鳴りが高い、おやめなさい。
はなはだ礼に欠けた方だ、座をお退きなさい」
などと威《おど》す。
大学出身の高官たちは得意そうに微笑をして、
源氏の教育方針のよいことに敬服したふうを見せているのであった。
ちょっと彼らの目の前で話をしても博士らは叱る、
無礼だと言って何でもないこともとがめる。
やかましく勝手気ままなことを言い放っている学者たちの顔は、
夜になって灯《ひ》がともったころから
いっそう滑稽なものに見えた。
まったく異様な会である。
源氏は、
「自分のような規律に馴れないだらしのない者は
粗相をして叱りまわされるであろうから」
と言って、御簾《みす》の中に隠れて見ていた。
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