2023-07-23から1日間の記事一覧
明石の君は源氏の一行が浪速《なにわ》を立った翌日は 吉日でもあったから住吉へ行って御幣《みてぐら》を奉った。 その人だけの願も果たしたのである。 郷里へ帰ってからは以前にも増した物思いをする人になって、 人数《ひとかず》でない身の上を歎《なげ…
遊覧の旅をおもしろがっている人たちの中で 源氏一人は時々暗い心になった。 高官であっても若い好奇心に富んだ人は、 小船を漕がせて集まって来る遊女たちに 興味を持つふうを見せる。 源氏はそれを見てにがにがしい気になっていた。 恋のおもしろさも対象…
数ならで なにはのことも かひなきに 何みをつくし 思ひ初《そ》めけん 田蓑島《たみのじま》での 祓《はら》いの木綿《ゆう》につけて この返事は源氏の所へ来たのである。 ちょうど日暮れになっていた。 夕方の満潮時で、 海べにいる鶴《つる》も鳴き声を…