2023-07-25から1日間の記事一覧
源氏は聞いて、恋人として考えるよりも、 首肯される意見を持つよき相談相手と信じていた その人の生命《いのち》が惜しまれて、 驚きながら六条邸を見舞った。 源氏は真心から御息所をいたわり、 御息所を慰める言葉を続けた。 病床の近くに源氏の座があっ…
斎宮がどんなにりっぱな貴女になっておいでになるであろうと、 それを目に見たく思っていた。 御息所は六条の旧邸をよく修繕して あくまでも高雅なふうに暮らしていた。 洗練された趣味は今も豊かで、 よい女房の多い所として風流男の訪問が絶えない。 寂し…
この御代《みよ》になった初めに斎宮もお変わりになって、 六条の御息所《みやすどころ》は伊勢《いせ》から帰って来た。 それ以来源氏はいろいろと昔以上の好意を表しているのであるが、 なお若かった日すらも恨めしい所のあった源氏の心の いわば余炎ほど…