乳母は源氏の手紙をいっしょに読んでいて、
人間にはこんなに意外な幸運を持っている人もあるのである、
みじめなのは自分だけであると悲しまれたが、
乳母はどうしているかということも奥に書かれてあって、
源氏が自分に関心を持っていることを知ることができたので満足した。
返事は、
数ならぬ み島がくれに 鳴く鶴《たづ》を
今日もいかにと訪《と》ふ人ぞなき
いろいろに物思いをいたしながら、
たまさかのおたよりを命にしておりますのもはかない私でございます。
仰せのように子供の将来に光明を認めとうございます。
というので、
信頼した心持ちが現われていた。
何度も同じ手紙を見返しながら、
「かわいそうだ」
と長く声を引いて独言《ひとりごと》を言っているのを、
夫人は横目にながめて、
「浦より遠《をち》に漕《こ》ぐ船の」
(我をば他《よそ》に隔てつるかな)と低く言って、
物思わしそうにしていた。
🌸優しく、揺れる… (Gently Swinging) written by 蒲鉾さちこ 🌸
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