機嫌を取ることにばかり追われて、
花散里《はなちるさと》を訪ねる夜も
源氏の作られないのは女のためにかわいそうなことである。
このごろは公務も忙しい源氏であった。
外出に従者も多く従えて出ねばならぬ
身分の窮屈《きゅうくつ》さもある上に、
花散里その人がきわだつ刺戟《しげき》も
与えぬ人であることを知っている源氏は、
今日逢わねばと心の湧《わ》き立つこともないのであった。
五月雨《さみだれ》のころは源氏もつれづれを覚えたし、
ちょうど公務も閑暇《ひま》であったので、
思い立ってその人の所へ行った。
訪ねては行かないでも源氏の君はこの一家の生活を
保護することを怠っていなかったのである。
それにたよっている人は恨むことがあっても、
ただみずからの薄命を歎《なげ》く程度のものであったから
源氏は気楽に見えた。
💐優しい日だまりと、静寂(The calm and quiet sunny place)by蒲鉾さちこ
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