須磨《すま》、
明石《あかし》で立てた願《がん》を
神へ果たすためであって、
非常な大がかりな旅になった。
廷臣たちが我も我もと随行を望んだ。
ちょうどこの日であった、
明石の君が毎年の例で参詣するのを、
去年もこの春も障《さわ》りがあって
果たすことのできなかった謝罪も兼ねて、
船で住吉へ来た。
海岸のほうへ寄って行くと
華美な参詣の行列が寄進する神宝を運び続けて来るのが見えた。
楽人、十列《とつら》の者もきれいな男を選んであった。
「どなたの御参詣なのですか」
と船の者が陸へ聞くと、
「おや、内大臣様の御願はたしの御参詣を知らない人もあるね」
供男《ともおとこ》階級の者もこう得意そうに言う。
何とした偶然であろう、
ほかの月日もないようにと明石の君は驚いたが、
はるかに恋人のはなばなしさを見ては、
あまりに懸隔のありすぎるわが身の上であることを
痛切に知って悲しんだ。
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