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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

第十二帖 須磨(すま)源氏物語

【源氏物語310 第12帖 須磨44】朱雀帝の深い愛に朧月夜の君は涙を流す。「そら、涙が落ちる、どちらのために」と帝はお言いになった。

音楽の合奏を侍臣たちにさせておいでになる時に、 帝は尚侍へ、 「あの人がいないことは寂しいことだ。 私でもそう思うのだから、 ほかにはもっと痛切にそう思われる人があるだろう。 何の上にも光というものがなくなった気がする」 と仰せられるのであった…

源氏物語308 第12帖 須磨42】花散里も悲しい心を書き送ってきた。源氏は、後見のいない花散里のために 長雨で傷んだ屋敷を修理させた。

花散里《はなちるさと》も悲しい心を書き送って来た。 どれにも個性が見えて、 恋人の手紙は源氏を慰めぬものもないが、 また物思いの催される種《たね》ともなるのである。 荒れまさる 軒のしのぶを眺めつつ 繁《しげ》くも露のかかる袖かな と歌っている花…

【源氏物語307 第12帖 須磨41】どの人へも相手の心の慰むに足るような愛情を書き送っては 返事を得る喜びにまた自身を慰めている源氏であった

こうした運命に出逢う日を予知していましたなら、 どこよりも私はあなたとごいっしょの旅に 出てしまうべきだったなどと、 つれづれさから 癖になりました物思いの中にはそれがよく思われます。 心細いのです。 伊勢人の 波の上漕ぐ 小船《をぶね》にも うき…

【源氏物語306 第12帖 須磨40】御息所からは、情のある手紙が来た。使いの若い侍を逗留させて伊勢の話などを話させた。侍は源氏に会い喜びの涙を流していた。

源氏の手紙に衝動を受けた御息所は、 あとへあとへと書き続《つ》いで、 白い支那《しな》の紙 四、五枚を巻き続けてあった。 書風も美しかった。 愛していた人であったが、その人の過失的な行為を、 同情の欠けた心で見て恨んだりしたことから、 御息所も恋…

【源氏物語305 第12帖 須磨39】六条御息所の方に便りを出しだ源氏。典雅な筆つきの思いやりのある返事を寄越された。

源氏が須磨へ移った初めの記事の中に 筆者は書き洩《も》らしてしまったが 伊勢の御息所のほうへも源氏は使いを出したのであった。 あちらからもまたはるばると 文《ふみ》を持って使いがよこされた。 熱情的に書かれた手紙で、典雅な筆つきと見えた。 どう…

【源氏物語304 第12帖 須磨38】紫の上のよこした衣服類は洗練され趣味がよく、優れた女性に成長したことを源氏は嬉しく思う。

尚侍《ないしのかみ》のは、 浦にたく あまたにつつむ 恋なれば 燻《くゆ》る煙よ行く方《かた》ぞなき 今さら申し上げるまでもないことを略します。 という短いので、 中納言の君は悲しんでいる尚侍の哀れな状態を報じて来た。 身にしむ節々《ふしぶし》も…

【源氏物語303 第12帖 須磨37】入道の宮も東宮のために源氏が 逆境に沈んでいることを悲しんでおいでになった。尼になられた宮のお返事は以前に比べて情味があった。

入道の宮も東宮のために源氏が逆境に沈んでいることを 悲しんでおいでになった。 そのほか源氏との宿命の深さから思っても 宮のお歎《なげ》きは、複雑なものであるに違いない。 これまではただ世間が恐ろしくて、 少しの憐《あわれ》みを見せれば、 源氏は…

【源氏物語302 第12帖 須磨36】源氏がそこから出入りした戸口、よりかかっていることの多かった柱も見ては胸が悲しみでふさがる紫の上。

鏡の影ほどの確かさで 心は常にあなたから離れないだろうと言った、 恋しい人の面影はその言葉のとおりに目から離れなくても、 現実のことでないことは何にもならなかった。 源氏がそこから出入りした戸口、 よりかかっていることの多かった柱も見ては 胸が…

【源氏物語301 第12帖 須磨35】源氏の手紙を見て衝撃を受け 泣き焦がれる紫の上。少納言は北山の僧都に祈祷を頼む。

京では須磨の使いのもたらした手紙によって 思い乱れる人が多かった。 二条の院の女王《にょおう》は 起き上がることもできないほどの衝撃を受けたのである。 焦れて泣く女王を 女房たちはなだめかねて心細い思いをしていた。 源氏の使っていた手道具、 常に…

【源氏物語300 第12帖 須磨34】源氏は京に使いを出した。藤壺の宮、朧月夜の君、左大臣へも書き、若君の乳母の君へも 育児についての注意を書いて送った。

源氏は京へ使いを出すことにした。 二条の院へと入道の宮へとの手紙は容易に書けなかった。 宮へは、 松島の あまの苫屋《とまや》も いかならん 須磨の浦人 しほたるる頃《ころ》 いつもそうでございますが、 ことに五月雨にはいりましてからは、 悲しいこ…

【源氏物語299 第12帖 須磨33】旅住まいがようやく整った形式を備えるようになったころは、もう五月雨の季節になっていて、源氏は京の事がしきりに思い出された。

きわめて短時日のうちにその家もおもしろい上品な山荘になった。 水の流れを深くさせたり、 木を植えさせたりして落ち着いてみればみるほど夢の気がした。 摂津守《せっつのかみ》も 以前から源氏に隷属していた男であったから、 公然ではないが好意を寄せて…

【源氏物語298 第12帖 須磨32】隠栖の場所は 在原行平が「藻塩 垂れつつ侘ぶと答へよ」と歌って住んでいた所に近い。極めて寂しい所である。

ふる里を 峯の霞《かすみ》は 隔つれど 眺《なが》むる空は同じ雲井か 総てのものが寂しく悲しく見られた。 隠栖《いんせい》の場所は行平《ゆきひら》が 「藻塩《もしほ》垂《た》れつつ侘《わ》ぶと答へよ」 と歌って住んでいた所に近くて、 海岸からはや…

【源氏物語297 第12帖 須磨31】夜が明けてから家を出るのは見苦しいと思って別れて行った。 道すがらも夫人の面影が目に見えて、源氏は胸を悲しみにふさがらせたまま船に乗った。

惜しからぬ 命に代へて 目の前の 別れをしばし とどめてしがな と夫人は言う。 それが真実の心の叫びであろうと思うと、 立って行けない源氏であったが、 夜が明けてから家を出るのは見苦しいと思って 別れて行った。 道すがらも夫人の面影が目に見えて、 源…

【源氏物語296 第12帖 須磨30】「生ける世の 別れを知らで 契りつつ命を人に限りけるかな はかないことだった」とだけ言った。悲痛な心の底は見せまいとしているのであった

当日は終日夫人と語り合っていて、 そのころの例のとおりに 早暁に源氏は出かけて行くのであった。 狩衣《かりぎぬ》などを着て、簡単な旅装をしていた。 「月が出てきたようだ。 もう少し端のほうへ出て来て、 見送ってだけでもください。 あなたに話すこと…

【源氏物語295 第12帖 須磨29】皆が皆恩を忘れているのではないが、報復に手段を選ばない恐ろしい政府をはばかって、現在の源氏に好意を表示しに来る人はないのである。

七歳から夜も昼も父帝のおそばにいて、 源氏の言葉はことごとく通り、 源氏の推薦はむだになることもなかった。 官吏はだれも源氏の恩をこうむらないものはないのである。 源氏に対して感謝の念のない者はないのである。 大官の中にも弁官の中にもそんな人は…

【源氏物語294 第12帖 須磨28】東宮の御殿は 忍び泣きで満ちていた。世間もだれ一人今度の当局者の処置を至当と認める者はないのであった。

咲きてとく 散るは憂《う》けれど 行く春は 花の都を 立ちかへり見よ また 御運の開ける時がきっとございましょう。 とも書いて出したが、 そのあとでも他の女房たちといっしょに悲しい話をし続けて、 東宮の御殿は忍び泣きの声に満ちていた。 一日でも源氏…

【源氏物語292 第12帖 須磨26】源氏は、東宮へもお暇乞いの御挨拶をした。この手紙は、桜の花の大部分は散った枝へ つけてあった。

源氏は東宮へもお暇乞いの御挨拶《あいさつ》をした。 中宮は王命婦《おうみょうぶ》を御自身の代わりに 宮のおそばへつけておありになるので、 その部屋のほうへ手紙を持たせてやったのである。 いよいよ 今日京を立ちます。 もう一度伺って宮に拝顔を得ま…

【源氏物語291 第12帖 須磨25】院の御陵で、一心に源氏が拝んでいる時に、昔のままのお姿が幻に見えた。寒けがするほどはっきりと見えた幻であった。

父帝の御陵に来て立った源氏は、 昔が今になったように思われて、 御在世中のことが目の前に見える気がするのであったが、 しかし尊い君王も過去の方になっておしまいになっては、 最愛の御子の前へも姿を お出しになることができないのは悲しいことである。…

【源氏物語290 第12帖 須磨24】やっと月が出たので、三条の宮を源氏は出て御陵へ行こうとした。供はただ五、六人つれただけである。下の侍も親しい者ばかりにして馬で行った。

やっと月が出たので、 三条の宮を源氏は出て御陵へ行こうとした。 供はただ五、六人つれただけである。 下の侍も親しい者ばかりにして馬で行った。 今さらなことではあるが 以前の源氏の外出に比べてなんという寂しい一行であろう。 家従たちも皆悲しんでい…

【源氏物語289 第12帖 須磨23】藤壺の宮の前で、初恋人への怨恨《えんこん》、父性愛、別離の悲しみが一つになって泣く源氏の姿はあくまでも優雅であった。

「こういたしました意外な罪に問われますことになりましても、 私は良心に思い合わされることが一つございまして 空恐ろしく存じます。 私はどうなりましても東宮が御無事に即位あそばせば 私は満足いたします」 とだけ言った。 それは真実の告白であった。 …

【源氏物語 288 第12帖 須磨 22】出立の前夜に源氏は院のお墓へ謁するために北山へ向かった。お居間の御簾《みす》の前に源氏の座が設けられて、宮御自身でお話しになるのであった。

枯れ葉 written by ハヤシユウ 出立の前夜に源氏は院のお墓へ謁するために北山へ向かった。 明け方にかけて月の出るころであったから、 それまでの時間に源氏は入道の宮へお暇乞いに伺候した。 お居間の御簾《みす》の前に源氏の座が設けられて、 宮御自身…

【源氏物語287 第12帖 須磨21】源氏は朧月夜の君に 手紙を送った。朧月夜の君は非常に悲しがった。流れて出る涙はとめどもなかった。

孤影 written by ハシマミ 源氏はまた途中の人目を気づかいながら 尚侍《ないしのかみ》の所へも別れの手紙を送った。 あなたから何とも言ってくださらないのも 道理なようには思えますが、 いよいよ京を去る時になってみますと、 悲しいと思われることも…

【源氏物語286 第12帖 須磨20】源氏は、関わった女性の生活が立ちゆくように 細やかな配慮をした。左大臣家の乳母や花散里にも同じようにした。

涙雨 written by ミルアージュ これまで東の対の女房として源氏に直接使われていた中の、 中務《なかつかさ》、中将などという源氏の愛人らは、 源氏の冷淡さに恨めしいところはあっても、 接近して暮らすことに幸福を認めて満足していた人たちで、 今後は…

【源氏物語285 第12帖 須磨19】源氏はいよいよ旅の用意をした。家のことは紫の上にたくし、少納言の乳母を上に家司達に管理上の事務を取らせることにした。

夕暮れ written by キュス 源氏はいよいよ旅の用意にかかった。 源氏に誠意を持って仕えて、 現在の権勢に媚びることを思わない人たちを選んで、 家司として留守中の事務を扱う者をまず上から下まで定めた。 随行するのは特にまたその中から選ばれた至誠の士…

【源氏物語284 第12帖 須磨18】月の光が花散里の袖の上に差している。女君の悲しがっている様子が哀れで、源氏の方が慰めてやらねばならなかった。

夜と静寂(The night and quiet) written by 蒲鉾さちこ 恋の初めから今日までのことを源氏が言い出して、 感傷的な話の尽きないのであるが、 鶏ももうたびたび鳴いた。 源氏はやはり世間をはばかって、 ここからも早暁に出て行かねばならないのである。 月が…

【源氏物語283 第12帖 須磨17】しめやかの月の光の中を源氏が歩いてきた。二人は並んで月を眺めながら明け方まで語っていた。

月夜に光る written by すもち 西座敷にいる姫君は、 出発の前二日になっては もう源氏の来訪は受けられないものと思って、 気をめいらせていたのであったが、 しめやかな月の光の中を、 源氏がこちらへ歩いて来たのを知って、 静かに膝行《いざ》って出た。…

【源氏物語282 第12帖 須磨16】花散里は心細がって、今度のことが決まって以来 始終手紙をよこす。源氏は花散里の姉妹の屋敷を訪ねる。

花影 written by Fukagawa 花散里《はなちるさと》が心細がって、 今度のことが決まって以来始終手紙をよこすのも、 源氏にはもっともなことと思われて、 あの人ももう一度逢いに行ってやらねば 恨めしく思うであろうという気がして、 今夜もまたそこへ行く…

【源氏物語281 第12帖 須磨15】帥の宮と中将が来てくれた。自分は無為の人間だからと無地の直衣にしたが、それが帰って美しかった。

落ちる葉、移りゆく秋の中で(Fallen leaves,Shifting of the autumn) written by蒲鉾さちこ 昼に近いころまで源氏は寝室にいたが、 そのうちに帥《そつ》の宮がおいでになり、 三位中将も来邸した。 面会をするために源氏は着がえをするのであったが、 「私…

【源氏物語280 第12帖 須磨14】源氏は、愛妻と一緒に配所に行くことは、迫害をする口実を与えるようなものだからと紫の上に言う。

切ない風に吹かれて…(Blowing in the nostalgic wind) written by蒲鉾さちこ 「私がいつまでも現状に置かれるのだったら、 どんなひどい侘び住居《ずまい》であってもあなたを迎えます。 今それを実行することは人聞きが穏やかでないから、 私は遠慮してしな…

【源氏物語279 第12帖 須磨13】紫の上の父の兵部卿の宮は、源氏の失脚後、皇太后派をはばかってよそよそしい態度をおとりになる。

悲哀の響き(Echo with sorrow) written by 蒲鉾さちこ 父の親王は初めからこの女王《にょおう》に、 手もとで育てておいでになる姫君ほどの深い愛を 持っておいでにならなかったし、 また現在では皇太后派をはばかって、 よそよそしい態度をおとりになり、 …