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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

2023-07-08から1日間の記事一覧

【源氏物語322 第12帖 須磨56】紫の上の美しい容姿に、誠実な性格に、暖かい思いやりのある人扱いに敬服して暇乞いする者はいない。源氏は紫の上と離れているのが堪え難い。

二条の院の姫君は時がたてばたつほど、 悲しむ度も深くなっていった。 東の対にいた女房もこちらへ移された初めは、 自尊心の多い彼女たちであるから、たいしたこともなくて、 ただ源氏が特別に心を惹かれているだけの女性であろうと 女王を考えていたが、 …

【源氏物語321 第12帖 須磨55】弟宮達や高官との手紙のやり取りも、大后の怒りを恐れて消息を近頃しなくなった。

源氏の御弟の宮たちそのほか親しかった高官たちは 初めのころしきりに源氏と文通をしたものである。 人の身にしむ詩歌が取りかわされて、 それらの源氏の作が世上にほめられることは 非常に太后のお気に召さないことであった。 「勅勘を受けた人というものは…

【源氏物語320 第12帖 須磨54】京では 光源氏のない寂寥を多く感じた。東宮は常に源氏を恋しく思召して、人の見ぬ時には泣いておいでになる。

京では月日のたつにしたがって 光源氏のない寂寥《せきりょう》を多く感じた。 陛下もそのお一人であった。 まして東宮は常に源氏を恋しく思召《おぼしめ》して、 人の見ぬ時には泣いておいでになるのを、 乳母《めのと》たちは哀れに拝見していた。 王命婦…

【源氏物語319 第12帖 須磨53】五節の君は源氏に手紙を送った。明石の駅長に詩を残した菅公のように源氏が思われて、五節は大変 同情した。

五節《ごせち》の君は人に隠れて源氏へ手紙を送った。 琴の音に ひきとめらるる 綱手縄《つなてなは》 たゆたふ心 君知るらめや 音楽の横好きをお笑いくださいますな。 と書かれてあるのを、 源氏は微笑しながらながめていた。 若い娘のきまり悪そうなところ…

【源氏物語318 第12帖 須磨52】大弐の子の筑前守が源氏を訪ねた。彼は泣く泣く帰って、源氏のの様子などを報告する。大弐も、京から来ていた迎えの人たちも皆泣いた。

大弐は源氏へ挨拶《あいさつ》をした。 「はるかな田舎《いなか》から上ってまいりました私は、 京へ着けばまず伺候いたしまして、 あなた様から都のお話を伺わせていただきますことを 空想したものでございました。 意外な政変のために御隠栖になっておりま…

【源氏物語317 第12帖 須磨51】九州の長官の大弐の一行の娘達は源氏が須磨に隠棲されていると聞いた。源氏の情人だった五節の君は 哀愁の情に堪えられないものがあった

このころに九州の長官の大弐《だいに》が上って来た。 大きな勢力を持っていて一門郎党の数が多く、 また娘たくさんな大弐ででもあったから、 婦人たちにだけ船の旅をさせた。 そして所々で陸を行く男たちと海の一行とが合流して 名所の見物をしながら来たの…

【源氏物語316 第12帖 須磨50 】去年の同じ夜に、なつかしい御調子で昔の話をいろいろあそばすふうが院によく似ておいでになった帝も源氏は恋しく思い出していた。

この月を入道の宮が 「霧や隔つる」とお言いになった去年の秋が恋しく、 それからそれへといろいろな場合の初恋人への思い出に心が動いて、 しまいには声を立てて源氏は泣いた。 「もうよほど更《ふ》けました」 と言う者があっても源氏は寝室へはいろうとし…

【源氏物語315 第12帖 須磨49🌕】中秋の十五夜‥源氏は 宮廷の音楽が思いやられた。「二千里外故人心」と源氏は吟じた。青年たちは涙を流して聞いている。

初雁《はつかり》は 恋しき人の つらなれや 旅の空飛ぶ声の悲しき と源氏が言う。 良清《よしきよ》、 かきつらね 昔のことぞ 思ほゆる 雁はそのよの友ならねども 民部大輔《みんぶたゆう》惟光《これみつ》、 心から 常世《とこよ》を捨てて 鳴く雁を 雲の…

【源氏物語314 第12帖 須磨48】源氏が「釈迦牟尼仏弟子《しゃかむにぶつでし》」と名のって経文をそらよみしている声もきわめて優雅に聞こえた。

美しい源氏と暮らしていることを無上の幸福に思って、 四、五人はいつも離れずに付き添っていた。 庭の秋草の花のいろいろに咲き乱れた夕方に、 海の見える廊のほうへ出てながめている源氏の美しさは、 あたりの物が皆 素描《あらがき》の画《え》のような寂…

【源氏物語313 第12帖 須磨47】源氏は、昼間は、皆と一緒に冗談を言ったり、いろいろの紙を継がせて手習いをしたり、珍しい支那の綾などに絵を描いたりした。

自分一人のために、 親兄弟も愛人もあって離れがたい故郷に別れて漂泊の人に 彼らはなっているのであると思うと、 自分の深い物思いに落ちたりしていることは、 その上彼らを心細がらせることであろうと源氏は思って、 昼間は皆といっしょに戯談《じょうだん…

【源氏物語312 第12帖 須磨46】秋風が須磨の里を吹く。源氏は目が覚め琴を弾き歌う。源氏も起きてきた惟光たちも涙を流す。

秋風が須磨の里を吹くころになった。 海は少し遠いのであるが、 須磨の関も越えるほどの秋の波が立つと行平が歌った波の音が、 夜はことに高く響いてきて、 堪えがたく寂しいものは謫居《たっきょ》の秋であった。 居間に近く宿直《とのい》している少数の者…

【源氏物語311 第12帖 須磨45】朱雀帝は、御意志によらない政治を行なう者があって、それを若いお心の弱さは どうなされようもなく お悩みは深い。

「今まで私に男の子のないのが寂しい。 東宮を院のお言葉どおりに 自分の子のように私は考えているのだが、 いろいろな人間が間にいて、 私の愛が徹底しないから心苦しくてならない」 などとお語りになる。 御意志によらない政治を行なう者があって、 それを…

【源氏物語310 第12帖 須磨44】朱雀帝の深い愛に朧月夜の君は涙を流す。「そら、涙が落ちる、どちらのために」と帝はお言いになった。

音楽の合奏を侍臣たちにさせておいでになる時に、 帝は尚侍へ、 「あの人がいないことは寂しいことだ。 私でもそう思うのだから、 ほかにはもっと痛切にそう思われる人があるだろう。 何の上にも光というものがなくなった気がする」 と仰せられるのであった…

源氏物語308 第12帖 須磨42】花散里も悲しい心を書き送ってきた。源氏は、後見のいない花散里のために 長雨で傷んだ屋敷を修理させた。

花散里《はなちるさと》も悲しい心を書き送って来た。 どれにも個性が見えて、 恋人の手紙は源氏を慰めぬものもないが、 また物思いの催される種《たね》ともなるのである。 荒れまさる 軒のしのぶを眺めつつ 繁《しげ》くも露のかかる袖かな と歌っている花…