2023-07-04から1日間の記事一覧
枯れ葉 written by ハヤシユウ 出立の前夜に源氏は院のお墓へ謁するために北山へ向かった。 明け方にかけて月の出るころであったから、 それまでの時間に源氏は入道の宮へお暇乞いに伺候した。 お居間の御簾《みす》の前に源氏の座が設けられて、 宮御自身…
孤影 written by ハシマミ 源氏はまた途中の人目を気づかいながら 尚侍《ないしのかみ》の所へも別れの手紙を送った。 あなたから何とも言ってくださらないのも 道理なようには思えますが、 いよいよ京を去る時になってみますと、 悲しいと思われることも…
涙雨 written by ミルアージュ これまで東の対の女房として源氏に直接使われていた中の、 中務《なかつかさ》、中将などという源氏の愛人らは、 源氏の冷淡さに恨めしいところはあっても、 接近して暮らすことに幸福を認めて満足していた人たちで、 今後は…
夕暮れ written by キュス 源氏はいよいよ旅の用意にかかった。 源氏に誠意を持って仕えて、 現在の権勢に媚びることを思わない人たちを選んで、 家司として留守中の事務を扱う者をまず上から下まで定めた。 随行するのは特にまたその中から選ばれた至誠の士…
夜と静寂(The night and quiet) written by 蒲鉾さちこ 恋の初めから今日までのことを源氏が言い出して、 感傷的な話の尽きないのであるが、 鶏ももうたびたび鳴いた。 源氏はやはり世間をはばかって、 ここからも早暁に出て行かねばならないのである。 月が…
月夜に光る written by すもち 西座敷にいる姫君は、 出発の前二日になっては もう源氏の来訪は受けられないものと思って、 気をめいらせていたのであったが、 しめやかな月の光の中を、 源氏がこちらへ歩いて来たのを知って、 静かに膝行《いざ》って出た。…
花影 written by Fukagawa 花散里《はなちるさと》が心細がって、 今度のことが決まって以来始終手紙をよこすのも、 源氏にはもっともなことと思われて、 あの人ももう一度逢いに行ってやらねば 恨めしく思うであろうという気がして、 今夜もまたそこへ行く…
落ちる葉、移りゆく秋の中で(Fallen leaves,Shifting of the autumn) written by蒲鉾さちこ 昼に近いころまで源氏は寝室にいたが、 そのうちに帥《そつ》の宮がおいでになり、 三位中将も来邸した。 面会をするために源氏は着がえをするのであったが、 「私…
切ない風に吹かれて…(Blowing in the nostalgic wind) written by蒲鉾さちこ 「私がいつまでも現状に置かれるのだったら、 どんなひどい侘び住居《ずまい》であってもあなたを迎えます。 今それを実行することは人聞きが穏やかでないから、 私は遠慮してしな…
悲哀の響き(Echo with sorrow) written by 蒲鉾さちこ 父の親王は初めからこの女王《にょおう》に、 手もとで育てておいでになる姫君ほどの深い愛を 持っておいでにならなかったし、 また現在では皇太后派をはばかって、 よそよそしい態度をおとりになり、 …
届かない声 written by K’z Art Storage 西の対《たい》へ行くと、 格子《こうし》を宵のままおろさせないで、 物思いをする夫人が夜通し起きていたあとであったから、 縁側の所々に寝ていた童女などが、 この時刻にやっと皆起き出して、 夜の姿のままで往…