「源氏の君というと、いつも美しい少年が思われるのだけれど、
こんなに大人らしい親切を見せてくださる。
顔がきれいな上に心までも並みの人に違ってでき上がっているのだね」
とおほめになるのを、若い女房らは笑っていた。
西の女王とお逢いになる時には、
「源氏の大臣から熱心に結婚が申し込まれていらっしゃるのだったら、
いいじゃありませんかね、今はじめての話ではなし、
ずっと以前からのことなのですからね、
お亡くなりになった宮様もあなたが斎院におなりになった時に、
結婚がせられなくなったことで失望をなすってね、
以前宮様がそれを実行しようとなすった時に、
あなたの気の進まなかったことで、
話をそのままにしておいたのを
御後悔してお話しになることがよくありましたよ。
けれどもね、
宮様がそうお思い立ちになったころは
左大臣家の奥さんがいられたのですからね、
そうしては三の宮がお気の毒だと思召して
第二の結婚をこちらでおさせにはなりにくかったのですよ。
あなたと従妹のその奥様が亡くなられたのだし、
そうなすってもいいのにと私は思うし、
一方ではまた新しく熱心にお申し込みがあるというのは、
やはり前生の約束事だろうと思う」
などと古めかしい御勧告をあそばすのを、
女王は苦笑して聞いておいでになった。
「お父様からも
そんな強情《ごうじょう》者に思われてきた私なのですから、
今さら源氏の大臣の声名が高いからと申して
結婚をいたしますのは恥ずかしいことだと思います」
こんなふうに思いもよらぬように言っておいでになったから、
宮もしまいにはお勧めにならなかった。
邸《やしき》の人は上から下まで皆が皆そうなるのを
望んでいることを女王は知って警戒しておいでになったが、
源氏自身は至誠で女王を動かしうる日は待っているが、
しいて力で結婚を遂げるようなことをしたくないと
女王の感情を尊重していた。
🌿🎼葉二~源博雅に捧ぐ(はふたつ〜)written by 田中芳典
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