雪のたくさん積もった上になお雪が降っていて、
松と竹がおもしろく変わった個性を見せている夕暮れ時で、
人の美貌《びぼう》もことさら光るように思われた。
「春がよくなったり、秋がよくなったり、
始終人の好みの変わる中で、
私は冬の澄んだ月が雪の上にさした無色の風景が
身に沁《し》んで好きに思われる。
そんな時にはこの世界のほかの大世界までが想像されて
これが人間の感じる極致の境だという気もするのに、
すさまじいものに冬の月を言ったりする人の浅薄さが思われる」
源氏はこんなことを言いながら御簾《みす》を巻き上げさせた。
月光が明るく地に落ちてすべての世界が白く見える中に、
植え込みの灌木類の押しつけられた形だけが哀れに見え、
流れの音も咽《むせ》び声になっている。
池の氷のきらきら光るのもすごかった。
源氏は童女を庭へおろして雪まろげをさせた。
美しい姿、頭つきなどが月の光にいっそうよく見えて、
やや大きな童女たちが、いろいろな袙《あこめ》を着て、
上着は脱いだ結び帯の略装で、もうずっと長くなっていて、
裾のひろがった髪は雪の上で鮮明にきれいに見られるのであった。
小さい童女は子供らしく喜んで走りまわるうちには
扇を落としてしまったりしている。
ますます大きくしようとしても、
もう童女たちの力では雪の球《たま》が動かされなくなっている。
童女の半分は東の妻戸の外に集まって、
自身たちの出て行けないのを残念がりながら、
庭の連中のすることを見て笑っていた。
❄️🎼雪去り、里に春は来たる written byのる
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