源氏はあながちにあせって結婚がしたいのではなかったが、
恋人の冷淡なのに負けてしまうのが残念でならなかった。
今日の源氏は最上の運に恵まれてはいるが、
昔よりはいろいろなことに経験を積んできていて、
今さら恋愛に没頭することの不可なことも、
世間から受ける批難も知っていながらしていることで、
これが成功しなければいよいよ不名誉であると信じて、
二条の院に寝ない夜も多くなったのを夫人は恨めしがっていた。
悲しみをおさえる力も尽きることがあるわけである。
源氏の前で涙のこぼれることもあった。
「なぜ機嫌《きげん》を悪くしているのですか、
理由《わけ》がわからない」
と言いながら、額髪《ひたいがみ》を手で払ってやり、
憐んだ表情で夫人の顔を源氏がながめている様子などは、
絵に描《か》きたいほど美しい夫婦と見えた。
🌺🎼#雨の窓 written by#キュス
🪻少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋🪷ぜひご覧ください🌿
https://syounagon.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷