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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語18 第1巻 鵜川の戦〈うかわのいくさ〉】〜The Tale of the Heike🪷


安元《あんげん》三年三月五日、

藤原師長《もろなが》は太政大臣、

その後を重盛が襲って内大臣に任命された。

当然内大臣になるべき、

大納言 定房《さだふさ》を越えての栄進であった。

 ところで話は二年程さかのぼって安元元年 

加賀守《かがのかみ》に任ぜられた師高《もろたか》という男があった。

彼は例の西光の息子である。

この男、人を人とも思わぬ暴君で、

加賀国一円に暴政の限りをつくし、

悪評ふんぷんたるものがあった。

ところでこの弟の師経《もろつね》が、

又兄貴に輪をかけたような乱暴者で、

加賀の代官に任ぜられた時、

鵜川という山寺で、

僧侶がお湯を沸かして浴びていたのをみつけると、

あっというまに、入りこんできて、僧を追い出し、

自分が浴びたあとで、馬を洗わせるような事をやった。

 怒った坊主達は、不法侵入をなじって、

追い出そうとしたが、師経の方も、意地になっているから、

弓矢にかけてもと頑張って動こうとしない。

坊主達も今はこれまでと、たちまち、射合い斬り合いが始ったが、

師経の馬が脚を折り、どうも戦況も不利なので、

師経は一先ず、総勢を収めて、退却した。

夜に入ると、今度は新たな加勢を千余人引連れ、

一つ残らず、寺の内を焼き払って揚々と引揚げた。

 寺をやかれて、このままおめおめ引下る山寺の坊主ではない。

まして鵜川は、加賀国にその由緒《ゆいしょ》も古い、

白山《はくさん》神社の末寺なのだ。

 

七月九日の暮方、白山三社八院から成る二千余の僧兵は、

智釈《ちしゃく》、覚明《かくみょう》、

宝台坊《ほうだいぼう》、正智《しょうち》、学音といった、

全寺きっての老僧を先頭に、

師経の館《やかた》目指して押し寄せてきたのである。

 明日の夜明けを待って総攻撃という事に決った。

面々は、唯じっと静まり返ったまま時の過ぎるのを待っている。

暗い闇の中に、時折、稲妻《いなずま》が走る。

その度にかぶとの星が、

夜目にもはっきりと、きらりきらりと輝くだけで、

人のそよとも動く気配も感じられないのが、

一層、不気味さを誘う。

 館の高窓から、この様子をちらりと見た師経は、

戦わぬ先に臆病風を起し、

こっそり夜逃げして京へ行ってしまった。

 あくる朝、待ちかねた一同が館まできてみると、

中はも抜けのからである。人の子一人姿が見えない。

歯ぎしりして口惜しがった僧兵達は

白山 中宮《ちゅうぐう》の神輿《みこし》をふり立てると、

山門に訴えようと、比叡山に行進を開始した。

昼夜兼行の強行軍で八月十二日、

比叡山の東坂本《ひがしさかもと》に神輿が到着すると、

何の前ぶれか、北の空から雷鳴が轟《とどろ》き、

いつか都の空にも拡がり、雪が降り出して、

みるみる、山上から、洛中くまなく真白になってしまった。

 

白山の神輿を迎えて、いやが上にも、

士気のたかまってきた比叡山三千の僧、及び白山七社の神官達は、

日夜、祈祷に専念すると同時に、師高の流罪、師経の禁獄という、

二大要求を掲げて、朝廷に早期裁決を迫った。

しかし、その裁断は、

一日伸ばしに伸びて、一向にご沙汰の様子がなかった。

心ある公卿等も、陰では、成行きを心配し、

「とにかく、敵に廻したら、うるさい山門の事だし、

 昔から、山門の事では、幾多の重臣が、

 ひどい目にあってるんだから、師高ぐらいの人間なら、

 さっさと、山門の要求を容《い》れてしまえばいいのに」

と、言う意見もあるのだが、なまじ公けに事を持出すと、

どんな目に遭うかも知れず、我が身可愛さに、

みんな口をつぐんでいるのであった。

🪷🎼うしろのしょうめん written by ハシマミ

 

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