だれもすることだけれど、
その場合に非常にしっくりと合ったことをなさる方だった。
どんな時にもあの方がおいでになったらと、
残念に思われることが多い。
私などに対して法《のり》を越えた御待遇はなさらなかったから、
細かなことは拝見する機会もなかったが、
さすがに尊敬している私を信用はしていてくだすった。
私は何かのことがあると歌などを差し上げたが、
文学的に見て優秀なお返事でないが、
見識があるというよさはおありになって、
お言いになることが皆深みのあるものだった。
あれほど完全な貴女《きじょ》がほかにもあるとは思われない。
柔らかに弱々しくいらっしゃって、
気高い品のよさがあの方のものだったのですからね。
しかしあなただけは血縁の近い女性だけあってあの方によく似ている。
少しあなたは嫉妬《しっと》をする点だけが悪いかもしれないね。
前斎院の性格はまたまったく変わっておいでになる。
私の寂しい時に手紙などを書く交際相手で敬意の払われる、
晴れがましい友人としては
あの方だけがまだ残っておいでになると言っていいでしょう」
と源氏が言った。
🪷🎼花の幻影 written by のる
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