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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

【平家物語26 第2巻 西光被斬②〈さいこうがきられ〉】〜The Tale of the Heike🪷


額に汗をみなぎらせ、真蒼《まっさお》な顔に息使いも荒く、

西八条の邸に入ってきた行綱に、

家来達も驚いて、早速、清盛の所に知らせた。

「何、行綱だと? めったに来もしない奴が、

 又何でこんな夜中にやって来たんだ? 

 とにかくおそいから、わしは逢わん、

 盛国《もりくに》、お前が、言伝てを聞いてこい」

清盛は傍らの主馬判官《しゅめのはんがん》盛国にいった。

暫くして盛国が戻ってきて、

「何か、直《じ》きじき、お話したいとか」

「直きじきだと? 一体何だろう?」

 さすがに清盛も、行綱の唯ならぬ様子に、

何事か起ったのかと、不安になってきて、

自分で渡殿《わたどの》の中門まで出てきた。

「この夜更けに、一体、何の用で、わしに逢いたいのじゃ?」

「実は、昼のうちは人目につきやすく、

 中々その折もございませんで、

 夜中お騒せしてまことに心苦しいのですが、

 このところ、後白河院の御所で、兵具《ひょうぐ》を整え、

 軍兵《ぐんぴょう》を召集しているご様子はご存じでございますか?」

「ああ、あれか」

清盛は、人騒せな男だと思いながらのんびり答えた。

「あれは、何、叡山攻めの仕度じゃよ」

「それがそうでないのでございますよ」

行綱は、身近く清盛の側に寄ると小声で囁いた。

「実は、平家ご一門に関る事でございまして、

 れっきとした謀叛《むほん》の準備なので」

「えっ?」

 清盛も一瞬、さっと顔色を変えた。

今の今まで、

のんびりと行綱と話をしていた清盛とは人が違った様だった。

目がきっと坐り、眉がぴりぴりと動いた。

体が小きざみに震えて、今にも行綱にとびかかりそうである。

「院はご存知なのであろうか」

「もちろんでございますとも、第一、軍兵の召集は、

 院宣《いんぜん》ということでお集めになりましたもので、

 ご存知にならぬ筈はございません。

 いつぞや、鹿ヶ谷の山荘で、院もお出での席、

 こんな事もあったのでございますよ」

と陰謀の始めから終りまでを、

ある事ない事まぜこぜてしゃべりたてた。

清盛はまなじりをぴくぴくさせながら、

それでも最後まで聞いていたが、

「うん、わかった、ご苦労だった」

というが早いか、自ら、大声で、

侍達を呼び集めに奥に入っていった。

「既に火は放たれた」

火つけ役の行綱は、

任を果した安らかさと同時に

良心の呵責《かしゃく》も加わって、

別に追手などいるわけもないのに、はかまのもも立ちを高くとると、

そのまま外へ逃げ出し、家に帰ると、ひっそり小さくなっていた。

 清盛は、一族郎党をその夜の内に、

ひそかに西八条の邸に召集した。

寝耳に水の謀叛の知らせに、

人々はまだ、半分、耳を疑ってはいたが、

とにかく清盛のお召しなので、

右大将宗盛、知盛らの諸将も甲冑《かっちゅう》に弓矢という、

完全武装で集ってきた。

その数はおよそ六、七千騎であった。

🪷🎼#荊の庭 written by #稿屋 隆

 

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