「尚侍《ないしのかみ》は
貴婦人の資格を十分に備えておいでになる、
軽佻《けいちょう》な気などは
少しもお見えにならないような方だのに、
あんなことのあったのが、私は不思議でならない」
「そうですよ。艶《えん》な美しい女の例には、
今でもむろん引かねばならない人ですよ。
そんなことを思うと自分のしたことで
人をそこなった後悔が起こってきてならない。
まして多情な生活をしては年が行ったあとで
どんなに後悔することが多いだろう。
人ほど軽率なことはしないでいる男だと思っていた
私でさえこうだから」
源氏は尚侍の話をする時にも涙を少しこぼした。
「あなたが眼中にも置かないように軽蔑している山荘の女は、
身分以上に貴婦人の資格というものを皆そろえて持った人ですがね、
思い上がってますますよく見えるのも人によることですから、
私はその点をその人によけいなもののようにも見ておりますがね。
私はまだずっと下の階級に属する女性たちを知らないが、
私の見た範囲でもすぐれた人はなかなかないものですよ。
東の院に置いてある人の善良さは、
若い時から今まで一貫しています。
愛すべき人ですよ。
ああはいかないものですよ。
私たちは青春時代から信じ合った、そしてつつましい恋を続けてきたものです。
今になって別れ別れになることなどはできませんよ。
私は深く愛しています」
こんな話に夜はふけていった。
🌕🎼月の唄 written by ゆうり
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