google.com, pub-8944455872984568, DIRECT, f08c47fec0942fa0

源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

2023-01-01から1年間の記事一覧

【源氏物語528 第15帖 蓬生28】惟光は荒れた屋敷に入ったが人の気配はない。帰ろうと思ったら月が差し、老女の咳が聞こえた。

惟光は邸の中へはいってあちらこちらと歩いて見て、 人のいる物音の聞こえる所があるかと捜したのであるが、 そんな物はない。 自分の想像どおりにだれもいない、 自分は往《ゆ》き返りにこの邸《やしき》は見るが、 人の住んでいる所とは思われなかったのだ…

【源氏物語527 第15帖 蓬生27】末摘花の姫君は、父宮の夢を見た。亡き人を恋ふる袂のほどなきに荒れたる軒の雫さへ添ふ。平生にも似ず歌を思ってみたのである。

末摘花の君は物悩ましい初夏の日に、 その昼間うたた寝をした時の夢に父宮を見て、 さめてからも名残《なごり》の思いにとらわれて、 悲しみながら雨の洩《も》って濡れた廂《ひさし》の 室の端のほうを拭《ふ》かせたり 部屋の中を片づけさせたりなどして、…

【源氏物語526 第15帖 蓬生26】荒れた大木が森のような邸の前に来た。末に藤がかかり、月の光に花がなびき その香が懐かしい。常陸宮の屋敷だと気づく。

車の中の源氏は昔をうつらうつらと幻に見ていると、 形もないほどに荒れた大木が 森のような邸《やしき》の前に来た。 高い松に藤がかかって月の光に花のなびくのが見え、 風といっしょにその香がなつかしく送られてくる。 橘《たちばな》とはまた違った感じ…

【源氏物語525 第15帖 蓬生25】四月ごろに花散里を訪ねようと二条の院を出た。雨がやんだあとで月が出てきた。青春時代の忍び歩きの思い出される艶な夕月夜であった。

源氏は長くこがれ続けた紫夫人のもとへ 帰りえた満足感が大きくて、 ただの恋人たちの所などへは 足が向かない時期でもあったから、 常陸の宮の女王はまだ生きているだろうか というほどのことは時々心に上らないことはなかったが、 捜し出してやりたいと思…

【源氏物語524 第15帖 蓬生24】頼りにしていた侍従までも去り、仕える者たちも他に勤め先を探している。丈の高い雑草に囲まれた中の家で 末摘花は一人で寂しく暮らした。

「侍従はどうしました。暗くなりましたよ」 と大弐《だいに》夫人に小言《こごと》を言われて、 侍従は夢中で車に乗ってしまった。 そしてあとばかりが顧みられた。 困りながらも長い間離れて行かなかった人が、 こんなふうにして別れて行ったことで、 女王…

【源氏物語523 第15帖 蓬生23】末摘花の姫君と侍従は二人で歌を交わした。姫君は非常に泣き、侍従は命ある限り誠意を誓った。

「絶ゆまじき すぢを頼みし 玉かづら思ひの ほかにかけ離れぬる 死んだ乳母《まま》が遺言したこともあるからね、 つまらない私だけれど一生あなたの世話をしたいと思っていた。 あなたが捨ててしまうのももっともだけれど、 だれがあなたの代わりになって私…

【源氏物語188 第九帖 葵61完】左大臣の北の方の宮様が源氏に、素晴らしい衣装を贈る。源氏は下襲をすぐにそれに替える。

宮様の挨拶を女房が取り次いで来た。 「今日だけはどうしても昔を忘れていなければならないと 辛抱しているのですが、 御訪問くださいましたことでかえって その努力がむだになってしまいました」 それから、また、 「昔からこちらで作らせますお召し物も、 …

【源氏物語522 第15帖 蓬生22】泣く泣く侍従は大弐夫人と共に九州に。好意に むくいるものがなかったので、末摘花は自身の美しい髪を鬘にしたものを薫香とともに侍従に贈った。

侍従は名残《なごり》を惜しむ間もなくて、 泣く泣く女王《にょおう》に、 「それでは、今日はあんなにおっしゃいますから、 お送りにだけついてまいります。 あちらがああおっしゃるのももっともですし、 あなた様が行きたく思召《おぼしめ》さないのも 御…

【源氏物語521 第15帖 蓬生 21】大弐の夫人の叔母は、源氏の君は兵部卿の宮の姫君(若紫)を大切にして他に目がいかないようだと伝える。希望を断たれ末摘花は悲しくなり泣きいった。

「御好意はうれしいのですが、 人並みの人にもなれない私はこのままここで死んで行くのが 何よりもよく似合うことだろうと思います」 とだけ末摘花は言う。 「それはそうお思いになるのはごもっともですが、 生きている人間であって、 こんなひどい場所に住…

【源氏物語 34 第3帖 空蝉5 完】空蝉に去られた源氏は小君にぼやく。残された薄衣を手放そうとはしない源氏。 空蝉も複雑な思いを抱える

小君を車のあとに乗せて、 源氏は二条の院へ帰った。 その人に逃げられてしまった今夜の始末を源氏は話して、 おまえは子供だ、やはりだめだと言い、 その姉の態度があくまで恨めしいふうに語った。 気の毒で小君は何とも返辞をすることができなかった。 「…

【源氏物語520 第15帖 蓬生20】大弐夫人の叔母は、自分の夫が蔑まれていたことに傷ついていた。でも 案外 自分たちの階級も気楽だと言う。

「宮様がおいでになったころ、 私の結婚相手が悪いからって、 交際するのをおきらいになったものですから、 私らもついかけ離れた冷淡なふうになっていましたものの、 それからも こちら様は源氏の大将さんなどと 御結婚をなさるような御幸運でいらっしゃい…

【源氏物語519 第15帖 蓬生19】大弐の夫人は 姫のことを気の毒がるが、実は九州の長官夫人になって出発して行く希望に燃えているのである。

「もう出発しなければならないのですが、 こちらのことが気がかりなものですから、 今日は侍従の迎えがてらお訪ねしました。 私の好意をくんでくださらないで、 御自分がちょっとでも来てくださることを 御承知にならないことはやむをえませんが、 せめて侍…

【源氏物語518 第15帖 蓬生18】叔母の大弐の夫人が尋ねてきた。屋敷はさらにひどい荒れよう出会った。応接には侍従が対応した。

そんなころであるが大弐の夫人が突然訪ねて来た。 平生はそれほど親密にはしていないのであるが、 つれて行きたい心から、 作った女王の衣裳《いしょう》なども持って、 よい車に乗って来た得意な顔の夫人が にわかに常陸の宮邸へ現われたのである。 門をあ…

【源氏物語517 第15帖 蓬生17】冬になり末摘花は悲しく物思いの日々である。兄の禅師は源氏の八講に招かれたが、自分を尋ねることもなかったことに 望みがないと思うようになった。

冬にはいればはいるほど頼りなさはひどくなって、 悲しく物思いばかりして暮らす女王だった。 源氏のほうでは故院のための盛んな八講を催して、 世間がそれに湧《わ》き立っていた。 僧などは平凡な者を呼ばずに 学問と徳行のすぐれたのを選んで招じたその物…

【源氏物語516 第15帖 蓬生16】叔母の大弐の夫人は、なお誘うのであるが、末摘花は一途に源氏を信じている。ただひたすら忍耐し待ち続けているのである。

「京へお置きして参ることは気がかりでなりませんから いらっしゃいませ」 と誘うのであるが、 女王の心は なお忘れられた形になっている源氏を頼みにしていた。 どんなに時がたっても 自分の思い出される機会のないわけはない、 あれほど堅い誓いを自分にし…

【源氏物語515 第15帖 蓬生15】大弐の夫人は末摘花を思い上がっているとみている。侍従も大弐の甥との結婚で、自分の意思でなく九州行きに同行することになっていた。

大弐の夫人は、私の言ったとおりじゃないか。 どうしてあんな見る影もない人を 源氏の君が奥様の一人だとお思いになるものかね、 仏様だって罪の軽い者ほどよく導いてくださるのだ。 手もつけられないほどの貧乏女でいて、 いばっていて、 宮様や奥さんのい…

【源氏物語514 第15帖 蓬生14】源氏は帰京して 忠実な人たちに報いたが、末摘花だけは思い出されることがなく、彼女は苦しく切なく一人で泣いてばかりいた。

そのうちに源氏 宥免《ゆうめん》の宣旨が下り、 帰京の段になると、 忠実に待っていた志操の堅さを だれよりも先に認められようとする男女に、 それぞれ有形無形の代償を喜んで源氏の払った時期にも、 末摘花だけは思い出されることもなくて幾月かがそのう…

【源氏物語第513 第15帖 澪標13】末摘花の叔母の夫が九州の大弐に任命された。任地に旅立つ時、叔母は末摘花を伴って行きたがった。

そのうちに叔母の夫が九州の大弐《だいに》に任命された。 娘たちをそれぞれ結婚させておいて、 夫婦で任地へ立とうとする時にもまだ叔母は女王を伴って行きたがって、 「遠方へ行くことになりますと、 あなたが心細い暮らしをしておいでになるのを 捨ててお…

【源氏物語512 第15帖 蓬生12】叔母は貴族の出ながら下の階級に入ったため、蔑まれた腹いせに末摘花の姫君を娘達の女房としたいと思っていた。

初めから地方官級の家に生まれた人は、 貴族をまねて、 思想的にも思い上がった人になっている者も多いのに、 この夫人は貴族の出でありながら、 下の階級へはいって行く運命を生まれながらに持っていたものか、 卑しい性格の叔母君であった。 自身が、家門…

【源氏物語511 第15帖 蓬生11】末摘花には、疎遠になっている 、身分違いの地方官の妻になっている叔母がおり、乳母子の侍従は、時々そこへ行って勤めていた。

侍従という乳母《めのと》の娘などは、 主家を離れないで残っている女房の一人であったが、 以前から半分ずつは勤めに出ていた斎院がおかくれになってからは、 侍従もしかたなしに 女王《にょおう》の母君の妹で、 その人だけが身分違いの地方官の妻になって…

【源氏物語510 第15帖 蓬生10】末摘花の読むのは古いものばかり。今時の婦人のすることはせず 全てに古典的であった。

古くさい書物|棚《だな》から、 唐守《からもり》、藐姑射《はこや》の刀自《とじ》、 赫耶姫《かぐやひめ》物語などを絵に描いた物を引き出して 退屈しのぎにしていた。 古歌などもよい作を選《よ》って、 端書きも作者の名も書き抜いて置いて見るのがおも…

【源氏物語509 第15帖 蓬生9】友達もいず、趣味もない。親戚とも親しもうとすることも、手紙を書くこともない。末摘花は父宮に大切にされた時と同じ心持ちでいた。

古い歌集を読んだり、 小説を見たりすることでつれづれが慰められることにもなるし、 物質的に不足の多い境遇も忍んで行けるのであるが、 末摘花はそんな趣味も持っていない。 それは必ずしもよいことではないが、 暇な女性の間で友情を盛った手紙を書きかわ…

【源氏物語508 第15帖 蓬生8】盗人すらも外見の貧弱さに素通りをするような悲しい屋敷で 誰とも親しもうとせず 末摘花はひとりぼっちであった。

廚《くりや》の煙が立たないで なお生きた人が住んでいるという悲しい邸《やしき》である。 盗人というようながむしゃらな連中も 外見の貧弱さに愛想《あいそ》をつかせて、 ここだけは素通りにしてやって来なかったから、 こんな野良藪《のらやぶ》のような…

【源氏物語507 第15帖 蓬生7】兄の禅師は生活能力がない。末摘花の邸は、浅茅《あさじ》は庭の表も見えぬほど茂って、蓬《よもぎ》は軒の高さに達するほど荒れている。

兄の禅師《ぜんじ》だけは稀《まれ》に 山から京へ出た時に訪《たず》ねて来るが、 その人も昔風な人で、同じ僧といっても生活する能力が全然ない、 脱俗したとほめて言えば言えるような男であったから、 庭の雑草を払わせればきれいになるものとも気がつか…

【源氏物語506 第15帖 蓬生6】昔の立派なものである手道具を譲って欲しいというものもいるが、末摘花の姫君は頑強に拒む。とはいえ誰の支えもない姫君であった。

手道具なども昔の品の使い慣らしたりっぱな物のあるのを、 生《なま》物識りの骨董《こっとう》好きの人が、 だれに製作させた物、某の傑作があると聞いて、譲り受けたいと、 想像のできる貧乏さを軽蔑して申し込んでくるのを、 例のように女房たちは、 「し…

【源氏物語505 第15帖 蓬生5】よそへ移ろうという女房の言葉も「恐い気がするほど荒れていても、お父様の魂が残っていると思う点で心が慰むのだ」という末摘花。

まだ少しばかり残っている女房は、 「これではしようがございません。 近ごろは地方官などがよい邸を自慢に造りますが、 こちらのお庭の木などに目をつけて、 お売りになりませんかなどと近所の者から言わせてまいりますが、 そうあそばして、 こんな怖しい…

【源氏物語504 第15帖 蓬生4】もとから荒廃していた末摘花の屋敷は、いっそう狐の巣のようになった。気味悪く大きくなった木立ちになく梟《ふくろう》の声を毎日邸の人は聞いていた

よかった時代に昔から縁故のある女房は はじめてここに皆居つくことにもなって、 数が多くなっていたのも、 またちりぢりにほかへ行ってしまった。 そしてまた老衰して死ぬ女もあって、 月日とともに上から下まで召使の数が少なくなっていく。 もとから荒廃…

【源氏物語503 第15帖 蓬生3】常陸宮家の女房の嘆き‥貧しい暮らしから源氏の保護が加わって人並みの暮らしを知ったからこそ、今がいっそう辛く感じる。

古くからいた女房たちなどは、 「ほんとうに運の悪い方ですよ。 思いがけなく神か仏の出現なすったような親切をお見せになる方ができて、 人というものはどこに幸運があるかわからないなどと、 私たちはありがたく思ったのですがね、 人生というものは移り変…

【源氏物語502 第15帖 蓬生2】源氏の庇護で幸福であった末摘花の姫君も、源氏が須磨 明石に旅立ってからは忘れられ、底なしの貧しい身の上になった。

常陸《ひたち》の宮の末摘花《すえつむはな》は、 父君がおかくれになってから、 だれも保護する人のない心細い境遇であったのを、 思いがけず生じた源氏との関係から、 それ以来物質的に補助されることになって、 源氏の富からいえば物の数でもない情けを …

【源氏物語501 第15帖 蓬生1】真実悲しい境遇に落ちた人というのは、源氏が京を出発した際のことも 無視して行かれた恋人たちがそれであった。

源氏が須磨《すま》、明石《あかし》に 漂泊《さすら》っていたころは、 京のほうにも悲しく思い暮らす人の多数にあった中でも、 しかとした立場を持っている人は、苦しい一面はあっても、 たとえば二条の夫人などは、 源氏が旅での生活の様子もかなりくわし…