常陸《ひたち》の宮の末摘花《すえつむはな》は、
父君がおかくれになってから、
だれも保護する人のない心細い境遇であったのを、
思いがけず生じた源氏との関係から、
それ以来物質的に補助されることになって、
源氏の富からいえば物の数でもない情けを
かけていたにすぎないのであったが、
受けるほうの貧しい女王《にょおう》一家のためには、
盥《たらい》へ星が映ってきたほどの望外の幸福になって、
生活苦から救われて幾年かを来たのであるが、
あの事変後の源氏は、いっさい世の中がいやになって、
恋愛というほどのものでもなかった女性との関係は心から消しもし、
消えもしたふうで、
遠くへ立ってからははるばると手紙を送るようなこともしなかった。
まだ源氏から恵まれた物があって
しばらくは泣く泣くも前の生活を続けることができたのであるが、
次の年になり、
また次の年になりするうちには
まったく底なしの貧しい身の上になってしまった。
🪷🎼秋、深まりて written by 蒲鉾さちこ🪷
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