漂泊《さすら》っていたころは、
京のほうにも悲しく思い暮らす人の多数にあった中でも、
しかとした立場を持っている人は、苦しい一面はあっても、
たとえば二条の夫人などは、
源氏が旅での生活の様子もかなりくわしく通信されていたし、
便宜が多くて手紙を書いて出すこともよくできたし、
当時無官になっていた源氏の無紋の衣裳《いしょう》も
季節に従って仕立てて送るような慰みもあった。
真実悲しい境遇に落ちた人というのは、
源氏が京を出発した際のこともよそに想像するだけであった女性たち、
無視して行かれた恋人たちがそれであった。
🪻🎼静かな夜(Quiet Night) written by 蒲鉾さちこ🪻
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