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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

常陸宮の姫を支えていこうと思う源氏【源氏物語94 第六帖 末摘花14】頭中将がこの結婚をどう批評するだろうと救われ難い気がする源氏。姫は素直に喜んだ。


車の通れる門はまだ開けてなかったので、

供の者が鍵《かぎ》を借りに行くと、

非常な老人《としより》の召使が出て来た。

そのあとから、娘とも孫とも見える、

子供と大人の間くらいの女が、

着物は雪との対照で

あくまできたなく汚れて見えるようなのを着て、

寒そうに何か小さい物に火を入れて袖の中で持ちながらついて来た。

 

雪の中の門が老人の手で開《あ》かぬのを見てその娘が助けた。

なかなか開かない。

源氏の供の者が手伝ったのではじめて扉が左右に開かれた。

『ふりにける 頭《かしら》の雪を 見る人も

 劣らずぬらす 朝の袖かな』 

と歌い、また、

「霰雪白紛紛《さんせつはくふんぷん》

 幼者形不蔽《えうしやはかたちをおおはず

と吟じていたが、

白楽天のその詩の終わりの句に鼻のことが言ってあるのを思って

源氏は微笑された。

 

頭中将があの自分の新婦を見たらどんな批評をすることだろう、

何の譬喩《ひゆ》を用いて言うだろう、

自分の行動に目を離さない人であるから、

そのうちこの関係に気がつくであろうと思うと

源氏は救われがたい気がした。

女王が普通の容貌《きりょう》の女であったら、

源氏はいつでもその人から離れて行ってもよかったであろうが、

醜い姿をはっきりと見た時から、

かえってあわれむ心が強くなって、良人《おっと》らしく、

物質的の補助などもよくしてやるようになった。

 

黒貂《ふるき》の毛皮でない絹、綾《あや》、綿、

老いた女たちの着料になる物、

門番の老人に与える物までも贈ったのである。

こんなことは自尊心のある女には堪えがたいことに違いないが

常陸《ひたち》の宮の女王は

それを素直に喜んで受けるのに 源氏は安心して、

せめてそうした世話をよくしてやりたいという気になり、

生活費などものちには与えた。

 

灯影《ほかげ》で見た空蝉《うつせみ》の横顔が

美しいものではなかったが、

姿態の優美さは十分の魅力があった。

常陸の宮の姫君は

それより品の悪いはずもない身分の人ではないか、

そんなことを思うと上品であるということは

身柄によらぬことがわかる。

男に対する洗練された態度、

正義の観念の強さ、

ついには負けて退却をしたなどと

源氏は何かのことにつけて空蝉が思い出された。

【源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

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