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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

末摘花の手紙と贈り物🎁【源氏95 第六帖 末摘花15】装束は古めかしく 薫香付きのゴツい紙に上手でない歌であった。源氏は末摘花の歌を書く、末摘花はベニバナ 赤い花(鼻)である

💠その年の暮れの押しつまったころに、

源氏の御所の宿直所《とのいどころ》へ

大 輔《たゆう》の命婦《みょうぶ》が来た。

源氏は髪を梳《す》かせたりする用事をさせるのには、

恋愛関係などのない女で、

しかも戯談《じょうだん》の言えるような女を選んで、

この人などがよくその役に当たるのである。

呼ばれない時でも大輔はそうした心安さから よく桐壺へ来た。

「変なことがあるのでございますがね。

 申し上げないでおりますのも意地が悪いようにとられることですし、

 困ってしまって上がったのでございます」  

微笑《ほほえみ》を見せながらそのあとを大輔は言わない。

「なんだろう。私には何も隠すことなんかない君だと思っているのに」

「いいえ、私自身のことでございましたら、

 もったいないことですがあなた様に御相談に上がって申し上げます。

 この話だけは困ってしまいました」

なお言おうとしないのを、

源氏は例のようにこの女がまた思わせぶりを始めたと見ていた。

「常陸の宮から参ったのでございます」  

こう言って命婦は手紙を出した。

「じゃ何も君が隠さねばならぬわけもないじゃないか」  

こうは言ったが、受け取った源氏は当惑した。

もう古くて厚ぼったくなった檀紙《だんし》に

薫香《くんこう》のにおいだけはよくつけてあった。

ともかくも手紙の体《てい》はなしているのである。

歌もある。

「唐衣《からごろも》 君が心のつらければ

 袂《たもと》はかくぞ そぼちつつのみ」

 何のことかと思っていると、

おおげさな包みの衣裳箱《いしょうばこ》を命婦は前へ出した。

「これがきまり悪くなくて きまりの悪いことってございませんでしょう。

 お正月のお召《めし》にというつもりで

 わざわざおつかわしになったようでございますから、

 お返しする勇気も私にございません。

 私の所へ置いておきましても先様の志を

 無視することになるでしょうから、

 とにかくお目にかけましてから

 処分をいたすことにしようと思うのでございます」

 

「君の所へ留めて置かれたらたいへんだよ。

 着物の世話をしてくれる家族もないのだからね、

 御親切をありがたく受けるよ」

とは言ったが、

もう戯談《じょうだん》も口から出なかった。

それにしてもまずい歌である。

これは自作に違いない、

侍従がおれば筆を入れるところなのだが、

そのほかには先生はないのだからと思うと、

その人の歌作に苦心をする様子が想像されておかしくて、

「もったいない貴婦人と言わなければならないのかもしれない」

と言いながら源氏は微笑して手紙と贈り物の箱をながめていた。

命婦は真赤《まっか》になっていた。

 

臙脂《えんじ》の我慢のできないようないやな色に出た直衣で、

裏も野暮《やぼ》に濃い、

思いきり下品なその端々が外から見えているのである。

悪感を覚えた源氏が、

女の手紙の上へ無駄《むだ》書きをするようにして書いているのを

命婦が横目で見ていると、

「なつかしき 色ともなしに 何にこの

 末摘花《すゑつむはな》を 袖《そで》に触れけん」

 色濃き花と見しかども、とも読まれた。

花という字にわけがありそうだと、

月のさし込んだ夜などに時々見た女王の顔を命婦は思い出して、

源氏のいたずら書きをひどいと思いながらも しまいにはおかしくなった。

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【源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて、

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

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