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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

源氏物語&古典をはじめ、日常の生活に雅とユーモアと笑顔を贈ります🎁

セーブル毛皮を着る宮の姫君🌷【源氏物語93 第六帖 末摘花13】見事な美しい長い髪。しかし耐えられない寒さだからと源氏は気の毒に思う。

頭の形と、髪のかかりぐあいだけは、

平生美人だと思っている人にもあまり劣っていないようで、

裾《すそ》が袿《うちぎ》の裾をいっぱいにした余りが

まだ一尺くらいも外へはずれていた。

その女王の服装までも言うのはあまりにはしたないようではあるが、

昔の小説にも女の着ている物のことは

真先《まっさき》に語られるものであるから書いてもよいかと思う。

桃色の変色してしまったのを重ねた上に、

何色かの真黒《まっくろ》に見える袿《うちぎ》、

黒貂《ふるき》の毛の香のする皮衣を着ていた。

毛皮は古風な貴族らしい着用品ではあるが、

若い女に似合うはずのものでなく、ただ目だって異様だった。

しかしながらこの服装でなければ

寒気が堪えられぬと思える顔であるのを

源氏は気の毒に思って見た。

 

何ともものが言えない。

相手と同じように無言の人に自身までがなった気がしたが、

この人が初めからものを言わなかったわけも

明らかにしようとして何かと尋ねかけた。

袖で深く口を被《おお》うているのも

たまらなく野暮《やぼ》な形である。

自然|肱《ひじ》が張られて練って歩く儀式官の袖が思われた。

さすがに笑顔《えがお》になった女の顔は

品も何もない醜さを現わしていた。

源氏は長く見ていることがかわいそうになって、

思ったよりも早く帰って行こうとした。

 

「どなたもお世話をする人のないあなたと知って結婚した私には

 何も御遠慮なんかなさらないで、

 必要なものがあったら言ってくださると私は満足しますよ。

 私を信じてくださらないから恨めしいのですよ」

などと、早く出て行く口実をさえ作って、

『朝日さす 軒のたるひは 解けながら

 などかつららの 結ぼほるらん」

と言ってみても、

「むむ」と口の中で笑っただけで、

返歌の出そうにない様子が気の毒なので、

源氏はそこを出て行ってしまった。

 

中門の車寄せの所が曲がってよろよろになっていた。

夜と朝とは荒廃の度が違って見えるものである、

どこもかしこも目に見える物は みじめでたまらない姿ばかりであるのに、

松の木へだけは暖かそうに雪が積もっていた。

田舎で見るような 身にしむ景色であることを源氏は感じながら、

いつか品定めに葎《むぐら》の門の中ということを人が言ったが、

これはそれに相当する家であろう。

ほんとうにあの人たちの言ったように、

こんな家に可憐《かれん》な恋人を置いて、

いつもその人を思っていたらおもしろいことであろう、

自分の、思ってならぬ人を思う苦しみは

それによって慰められるであろうがと思って、

これは詩的な境遇にいながら

なんらの男を引きつける力のない女であると断案を下しながらも、

自分以外の男はあの人を終世変わりない妻として置くことはできまい、

自分があの人の良人《おっと》になったのも、

気がかりにお思いになったはずの父宮の霊魂が

導いて行ったことであろうと思ったのであった。

 

うずめられている橘《たちばな》の木の雪を随身に払わせた時、

横の松の木がうらやましそうに自力で起き上がって、

さっと雪をこぼした。

たいした教養はなくてもこんな時に

風流を 言葉で言いかわす人がせめて一人でもいないのだろうかと 源氏は思った。

【源氏物語 第六帖 末摘花】

乳母子の大輔の命婦から亡き常陸宮の姫君の噂を聞いた源氏は、

「零落した悲劇の姫君」という幻想に憧れと好奇心を抱いて求愛した。

親友の頭中将とも競い合って逢瀬を果たしたものの、

彼女の対応の覚束なさは源氏を困惑させた。

さらにある雪の朝、

姫君の顔をのぞき見た光源氏はその醜さに仰天する。

その後もあまりに世間知らずな言動の数々に辟易しつつも、

源氏は彼女の困窮ぶりに同情し、

また素直な心根に見捨てられないものを感じて

彼女の暮らし向きへ援助を行うようになった。

二条の自宅で源氏は鼻の赤い女人の絵を描き、

さらに自分の鼻にも赤い絵の具を塗って、

若紫と兄妹のように戯れるのだった。

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