「私の何もかもが途中で挫折《ざせつ》してしまったころ、
心苦しくてなりませんでしたことが
どうやら少しずつよくなっていくようです。
今東の院に住んでおります妻は、
寄るべの少ない点で絶えず私の気がかりになったものですが、
それも安心のできるようになりました。
善良な女で、
私と双方でよく理解し合っていますから朗らかなものです。
私がまた世の中へ帰って朝政に与《あずか》るような喜びは
私にたいしたこととは思われないで、
そうした恋愛問題のほうがたいせつに思われる私なのですから、
どんな抑制を心に加えてあなたの御後見だけに満足していることか、
それをご存じになっていますか、
御同情でもしていただかなければかいがありません」
と源氏は言った。
面倒《めんどう》な話になって、
宮は何ともお返辞をあそばさないのを見て、
「そうですね、そんなことを言って私が悪い」
と話をほかへ源氏は移した。
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