斎宮《さいぐう》の女御《にょご》は予想されたように
源氏の後援があるために後宮のすばらしい地位を得ていた。
すべての点に
源氏の理想にする貴女《きじょ》らしさの備わった人であったから、
源氏はたいせつにかしずいていた。
この秋女御は御所から二条の院へ退出した。
中央の寝殿を女御の住居に決めて、
輝くほどの装飾をして源氏は迎えたのであった。
もう院への御遠慮も薄らいで、
万事を養父の心で世話をしているのである。
秋の雨が静かに降って植え込みの草の花の濡れ乱れた庭をながめて
女院のことがまた悲しく思い出された源氏は、
湿ったふうで女御の御殿へ行った。
濃い鈍《にび》色の直衣《のうし》を着て、
病死者などの多いために政治の局にあたる者は
謹慎をしなければならないというのに託して、
実は女院のために源氏は続いて精進をしているのであったから、
手に掛けた数珠《じゅず》を見せぬように
袖《そで》に隠した様子などが艶《えん》であった。
🪷🎼伝う涙 written by ゆうり
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