几帳《きちょう》だけを隔てて王女御はお逢いになった。
「庭の草花は残らず咲きましたよ。
今年のような恐ろしい年でも、
秋を忘れずに咲くのが哀れです」
こう言いながら柱によりかかっている源氏は美しかった。
御息所《みやすどころ》のことを言い出して、
野の宮に行ってなかなか逢ってもらえなかった秋のことも話した。
故人を切に恋しく思うふうが源氏に見えた。
宮も
「いにしへの昔のことをいとどしくかくれば袖ぞ露けかりける」
というように、
少しお泣きになる様子が非常に可憐《かれん》で、
みじろぎの音も類のない柔らかさに聞こえた。
艶《えん》な人であるに相違ない、
今日までまだよく顔を見ることのできないことが残念であると、
ふと源氏の胸が騒いだ。
困った癖である。
🍁🎼秋の音 written by Fukagawa
少納言のホームページ 源氏物語&古典 少納言の部屋 ぜひご覧ください🪷
https://syounagon.jimdosite.com
🪷聴く古典文学 少納言チャンネルは、聴く古典文学動画。チャンネル登録お願いします🪷