思いがけず源氏の君を婿に見る日が来たのであるが、
われわれには身分のひけ目があって、
よいことにも悲しみが常に添っていた。
しかし姫君がお生まれになったことで
私もだいぶ自信ができてきた。
姫君はこんな土地でお育ちになってはならない
高い宿命を持つ方に違いないのだから、
お別れすることがどんなに悲しくても私はあきらめる。
何事ももうとくにあきらめた私は僧じゃないか。
姫君は高い高い宿命の人でいられるが、
暫時《ざんじ》の間私に祖父と孫の愛を
作って見せてくださったのだ。
天に生まれる人も
一度は三途《さんず》の川まで行くということに
あたることだとそれを思って
私はこれで長いお別れをする。
私が死んだと聞いても仏事などはしてくれる必要はない。
死に別れた悲しみもしないでおおきなさい」
と入道は断言したのであるが、また、
「私は煙になる前の夕べまで
姫君のことを六時の勤行《ごんぎょう》に
混ぜて祈ることだろう。恩愛が捨てられないで」
と悲しそうに言うのであった。
🪷離れない迷い written by Fukagawa🪷
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