大臣は帰って行くふうだけを見せて、
情人である女の部屋にはいっていたが、
そっとからだを細くして廊下を出て行く間に、
少年たちの恋を問題にして語る女房たちの部屋があった。
不思議に思って立ち止まって聞くと、
それは自身が批評されているのであった。
「賢がっていらっしゃっても甘いのが親ですね。
とんだことが知らぬ間に起こっているのですがね。
子を知るは親にしかずなどというのは嘘ですよ」
などこそこそと言っていた。
情けない、自分の恐れていたことが事実になった。
打っちゃって置いたのではないが、
子供だから油断をしたのだ。
人生は悲しいものであると大臣は思った。
すべてを大臣は明らかに悟ったのであるが、
そっとそのまま出てしまった。
前駆がたてる人払いの声のぎょうさんなのに、
はじめて女房たちはこの時間までも
大臣がここに留まっていたことを知ったのである。
「殿様は今お帰りになるではありませんか。
どこの隅《すみ》にはいっておいでになったのでしょう。
あのお年になって浮気はおやめにならない方ね」
と女房らは言っていた。
内証話をしていた人たちは困っていた。
「あの時非常にいいにおいが
私らのそばを通ったと思いましたがね、
若君がお通りになるのだとばかり思っていましたよ。
まあこわい、悪口がお耳にはいらなかったでしょうか。
意地悪をなさらないとも限りませんね」
💐🎼凛 written by Fukagawa
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