山の紅葉は濃く淡《うす》く紅を重ねた間に、
霜枯れの草の黄が混じって見渡される逢坂山の関の口から、
また さっと一度に出て来た
襖姿《あおすがた》の侍たちの旅装の厚織物や
くくり染めなどは一種の美をなしていた。
源氏の車は簾《みす》がおろされていた。
今は右衛門佐《うえもんのすけ》になっている
昔の小君《こぎみ》を近くへ呼んで、
「今日こうして関迎えをした私を姉さんは無関心にも見まいね」
などと言った。
心のうちにはいろいろな思いが浮かんで来て、
恋しい人と直接言葉がかわしたかった源氏であるが、
人目の多い場所ではどうしようもないことであった。
女も悲しかった。昔が昨日のように思われて、
煩悶《はんもん》もそれに続いた煩悶がされた。
行くと来《く》と せきとめがたき 涙をや
絶えぬ清水《しみづ》と 人は見るらん
自分のこの心持ちは
お知りにならないであろうと思うとはかなまれた。
🍂枯れ葉 written by ハヤシユウ🍂
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