京から以前 紀伊守《きいのかみ》であった息子
その他の人が迎えに来ていて
源氏の石山詣《もう》でを告げた。
途中が混雑するであろうから、
こちらは早く逢坂山を越えておこうとして、
常陸介は夜明けに近江《おうみ》の宿を立って
道を急いだのであるが、
女車が多くてはかがゆかない。
打出《うちで》の浜を来るころに、
源氏はもう粟田山《あわたやま》を越えたということで、
前駆を勤めている者が無数に東へ向かって来た。
道を譲るくらいでは済まない人数なのであったから、
関山で常陸の一行は皆下馬してしまって、
あちらこちらの杉の下に車などを舁《かつ》ぎおろして、
木の間にかしこまりながら源氏の通過を目送しようとした。
女車も一部分はあとへ残し、
一部分は先へやりなどしてあったのであるが、
なおそれでも族類の多い派手な地方長官の一門と見えた。
そこには十台ほどの車があって、
外に出した袖の色の好みは田舎びずにきれいであった。
斎宮の下向《げこう》の日に出る物見車が思われた。
源氏の光がまた発揮される時代になっていて、
希望して来た多数の随従者は
常陸《ひたち》の一行に皆目を留めて過ぎた。
🌸Chilly written by Kyaai🌸
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