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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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男達の言いたい放題の夜☔️【源氏物語 14 第2帖 箒木3】雨夜の品定め 理想の女性は?家柄?親の財力? 左馬頭の持論  女性にして拝見したいほど美しい源氏

源氏物語 第二帖 💠箒木(ははきぎ) 〜五月雨が降る夜、光源氏が宮中で宿直をしているところに、頭中将(葵の上の兄)ら仲間の貴公子たちが訪れた。 各々自分の恋愛体験を語り、女性を三つの品、上の品、中の品、下の品と階級に分けて自分の持論を展開します。 光源氏はこの話し合いをきっかけに、それまで縁のなかった中流の女性に興味を持つようになりました。 そして、光源氏は方違えに、紀伊守の屋敷に行くことになった。 そこで伊予守の妻で、紀伊守の継母の空蝉に契を結びます(中の品の女人) 空蝉も光源氏に心惹かれますが、あまりの立場の違いから距離をとります。

 

 

「あなたらしくないことをおっしゃるものじゃありませんよ」

中将はたしなめるように言った。

左馬頭はなお話し続けた。

「家柄も現在の境遇も一致している高貴な家のお嬢さんが凡庸であった場合、

 どうしてこんな人ができたのかと情けないことだろうと思います。

 そうじゃなくて地位に相応なすぐれたお嬢さんであったら、

 それはたいして驚きませんね。 当然ですもの。

 私らにはよくわからない社会のことですから

 上の品は省くことにしましょう。

 こんなこともあります。

 世間からはそんな家のあることなども無視されているような寂しい家に、

 思いがけない娘が育てられていたとしたら、

 発見者は非常にうれしいでしょう。

 意外であったということは十分に男の心を引く力になります。

 父親がもういいかげん年寄りで、

 醜く肥《ふと》った男で、 風采《ふうさい》のよくない兄を見ても、

 娘は知れたものだと軽蔑している家庭に、 思い上がった娘がいて、

 歌も上手であったりなどしたら、 それは本格的なものではないにしても、

 ずいぶん興味が持てるでしょう。

 完全な女の選にははいりにくいでしょうがね」

と言いながら、

同意を促すように式部丞のほうを見ると、

自身の妹たちが 若い男の中で相当な評判になっていることを思って、

それを暗に言っているのだと取って、 式部丞は何も言わなかった。

そんなに男の心を引く女がいるであろうか、

上の品にはいるものらしい女の中にだって、

そんな女はなかなか少ないものだと 自分にはわかっているがと

源氏は思っているらしい。

 

柔らかい白い着物を重ねた上に、

袴《はかま》は着けずに 直衣《のうし》だけをおおように掛けて、

からだを横にしている源氏は平生よりもまた美しくて 、

女性であったらどんなにきれいな人だろうと思われた。

この人の相手には上の上の品の中から

選んでも飽き足りないことであろうと見えた。

「ただ世間の人として見れば無難でも、

 実際自分の妻にしようとすると、

 合格するものは見つからないものですよ。

 男だって官吏になって、

 お役所のお勤めというところまでは  だれもできますが、

 実際適所へ適材が行くということはむずかしいものですからね。

 しかしどんなに聡明な人でも 一人や二人で政治はできないのですから、

 上官は下僚に助けられ、下僚は上に従って、

 多数の力で役所の仕事は済みますが、

 一家の主婦にする人を選ぶのには、

 ぜひ備えさせねばならぬ資格がいろいろと幾つも必要なのです。

 これがよくてもそれには適しない。

 少しは譲歩してもまだなかなか思うような人はない。

 世間の多数の男も、 いろいろな女の関係を作るのが趣味ではなくても、

 生涯の妻を捜す心で、できるなら一所懸命になって

 自分で妻の教育のやり直しをしたりなどする必要のない女はないかと

 だれも思うのでしょう。

 必ずしも理想に近い女ではなくても、 結ばれた縁に引かれて、

 それと一生を共にする、 そんなのはまじめな男に見え、

 また捨てられない女も世間体がよいことになります。

 しかし世間を見ると、そう都合よくはいっていませんよ。

 お二方のような貴公子にはまして対象になる女があるものですか。

 私などの気楽な階級の者の中にでも、

 これと打ち込んでいいのはありませんからね。

 見苦しくもない娘で、それ相応な自重心を持っていて、

 手紙を書く時には 蘆手《あしで》のような簡単な文章を上手に書き、

 墨色のほのかな文字で相手を引きつけて置いて、

 もっと確かな手紙を書かせたいと男をあせらせて、

 声が聞かれる程度に接近して行って話そうとしても、

 息よりも低い声で少ししかものを言わないというようなのが、

 男の正しい判断を誤らせるのですよ。

 なよなよとしていて優し味のある女だと思うと、

 あまりに柔順すぎたりして、

 またそれが才気を見せれば多情でないかと不安になります。

 そんなことは選定の最初の関門ですよ。

 妻に必要な資格は家庭を預かることですから、

 文学趣味とかおもしろい才気などはなくてもいいようなものですが、

 まじめ一方で、なりふりもかまわないで、

 額髪《ひたいがみ》をうるさがって耳の後ろへはさんでばかりいる、

 ただ物質的な世話だけを一所懸命にやいてくれる、 そんなのではね。

 お勤めに出れば出る、帰れば帰るで、役所のこと、

 友人や先輩のことなどで 話したいことがたくさんあるんですから、

 それは他人には言えません。

 理解のある妻に話さないではつまりません。

 この話を早く聞かせたい、妻の意見も聞いて見たい、

 こんなことを思っていると そとででも独笑《ひとりえみ》が出ますし、

 一人で涙ぐまれもします。

 また自分のことでないことに公憤を起こしまして、

 自分の心にだけ置いておくことに我慢のできぬような時、

 けれども自分の妻はこんなことのわかる女でないのだと思うと、

 横を向いて一人で思い出し笑いをしたり、

 かわいそうなものだなどと独言《ひとりごと》を言うようになります。 

 そんな時に何なんですかと 突っ慳貪《けんどん》に言って

 自分の顔を見る細君などはたまらないではありませんか。

 ただ一概に子供らしくておとなしい妻を持った男は

 だれでもよく仕込むことに苦心するものです。

 たよりなくは見えても

 次第に養成されていく妻に多少の満足を感じるものです。

 一緒にいる時は 可憐さが不足を補って、

 それでも済むでしょうが、

 家を離れている時に用事を言ってやりましても 何ができましょう。

 遊戯も風流も主婦としてすることも自発的には何もできない、

 教えられただけの芸を見せるにすぎないような女に、

 妻としての信頼を持つことはできません。

 ですからそんなのもまただめです。

 平生はしっくりといかぬ夫婦仲で、 淡い憎しみも持たれる女で、

 何かの場合によい妻であることが痛感されるのもあります」  

こんなふうな通《つう》な左馬頭にも 決定的なことは言えないと見えて、

深い歎息《ためいき》をした。

 

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