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源氏物語&古典🪷〜笑う門には福来る🌸少納言日記🌸

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頭中将の哀しい恋 🌸【源氏物語 20 第2帖 箒木 9】 愛した人と撫子の娘は今どこに?儚げな常夏の女人🌼貴公子二人の運命と交差する

【源氏物語 第二帖 💠箒木(ははきぎ)】  〜五月雨が降る夜、光源氏が宮中で宿直をしているところに、頭中将(葵の上の兄)ら仲間の貴公子たちが訪れた。 各々自分の恋愛体験を語り、女性を三つの品、上の品、中の品、下の品と階級に分けて自分の持論を展開します。 光源氏はこの話し合いをきっかけに、それまで縁のなかった中流の女性に興味を持つようになりました。 そして、光源氏は方違えに、紀伊守の屋敷に行くことになった。 そこで伊予守の妻で、紀伊守の継母の空蝉に契を結びます(中の品の女人) 空蝉も光源氏に心惹かれますが、あまりの立場の違いから距離をとります。

「私もばか者の話を一つしよう」

中将は前置きをして語り出した。

「私がひそかに情人にした女というのは、

 見捨てずに置かれる程度のものでね、

 長い関係になろうとも思わずにかかった人だったのですが、

 馴れていくとよい所ができて心が惹かれていった。

 たまにしか行かないのだけれど、

 とにかく女も私を信頼するようになった。

 愛しておれば恨めしさの起こるわけのこちらの態度だがと、

 自分のことだけれど気のとがめる時があっても、

 その女は何も言わない。

 久しく間を置いて逢っても始終来る人といるようにするので、

 気の毒で、私も将来のことでいろんな約束をした。

 父親もない人だったから、

 私だけに頼らなければと思っている様子が

 何かの場合に見えて可憐な女でした。

 こんなふうに穏やかなものだから、

 久しく訪《たず》ねて行かなかった時分に、

 ひどいことを私の妻の家のほうから、

 ちょうどまたそのほうへも出入りする女の知人を介して言わせたのです。

 私はあとで聞いたことなんだ。

 そんなかわいそうなことがあったとも知らず、

 心の中では忘れないでいながら手紙も書かず、

 長く行きもしないでいると、 女はずいぶん心細がって、

 私との間に小さな子なんかもあったもんですから、

 煩悶《はんもん》した結果、

 撫子《なでしこ》の花を使いに持たせてよこしましたよ」

 中将は涙ぐんでいた。

 

「どんな手紙」と源氏が聞いた。

「なに、平凡なものですよ。

『山がつの 垣《かき》は荒るとも をりをりに

 哀れはかけよ 撫子の露』ってね。

 私はそれで行く気になって、 行って見ると、

 例のとおり穏やかなものなんですが、

 少し物思いのある顔をして、

 秋の荒れた庭をながめながら、

 そのころの虫の声と同じような力のないふうでいるのが、

 なんだか小説のようでしたよ。

『咲きまじる 花は何《いづ》れと わかねども

 なほ常夏《とこなつ》に しくものぞなき』

 子供のことは言わずに、

 まず母親の機嫌《きげん》を取ったのですよ。

『打ち払ふ 《そで》も露けき常夏に

 嵐《あらし》吹き添ふ秋も来にけり』

 こんな歌をはかなそうに言って、

 正面から私を恨むふうもありません。

 うっかり涙をこぼしても恥ずかしそうに紛らしてしまうのです。

 恨めしい理由をみずから追究して考えていくことが苦痛らしかったから、

 私は安心して帰って来て、

 またしばらく途絶えているうちに消えたようにいなくなってしまったのです。

 まだ生きておれば相当に苦労をしているでしょう。

 私も愛していたのだから、

 もう少し私をしっかり離さずにつかんでいてくれたなら、

 そうしたみじめな目に逢《あ》いはしなかったのです。

 長く途絶えて行かないというようなこともせず、

 妻の一人として待遇のしようもあったのです。

 撫子の花と母親の言った子もかわいい子でしたから、

 どうかして捜し出したいと思っていますが、

 今に手がかりがありません。

 これはさっきの話のたよりない性質の女にあたるでしょう。

 素知らぬ顔をしていて、心で恨めしく思っていたのに気もつかず、

 私のほうではあくまでも愛していたというのも、

 いわば一種の片恋と言えますね。 

 もうぼつぼつ今は忘れかけていますが、

 あちらではまだ忘れられずに、

 今でも時々はつらい悲しい思いをしているだろうと思われます。

 これなどは男に永久性の愛を求めようとせぬ態度に出るもので、

 確かに完全な妻にはなれませんね。

 だからよく考えれば、左馬頭のお話の嫉妬深い女も、

 思い出としてはいいでしょうが、

 今いっしょにいる妻であってはたまらない。

 どうかすれば断然いやになってしまうでしょう。

 琴の上手な才女というのも浮気の罪がありますね。

 私の話した女も、

 よく本心の見せられない点に欠陥があります。

 どれがいちばんよいとも言えないことは、

 人生の何のこともそうですがこれも同じです。

 何人かの女からよいところを取って、

 悪いところの省かれたような、

 そんな女はどこにもあるものですか。

 吉祥天女《きちじょうてんにょ》を恋人にしようと思うと、

 それでは仏法くさくなって困るということになるだろうからしかたがない」

中将がこう言ったので皆笑った。

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