婦人たちの言論は長くかかって、
一回分の勝負が容易につかないで時間がたち、
若い女房たちが興味をそれに集めている
陛下と梅壺《うめつぼ》の女御の御絵は
いつ席上に現われるか予想ができないのであった。
源氏も参内して、
双方から述べられる支持と批難の言葉をおもしろく聞いた。
「これは御前で最後の勝負を決めましょう」
と源氏が言って、
絵合わせはいっそう広く判者を求めることになった。
こんなこともかねて思われたことであったから、
須磨、明石の二巻を左の絵の中へ源氏は混ぜておいたのである。
中納言も劣らず絵合わせの日に傑作を出そうとすることに没頭していた。
世の中はもうよい絵を製作することと、
捜し出すことのほかに仕事がないように見えた。
「今になって新しく作ることは意味のないことだ。
持っている絵の中で優劣を決めなければ」
と源氏は言っているが、
中納言は人にも知らせず自邸の中で新画を多く作らせていた。
🪷時の残影 written by のる🪷
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