妻と乳母《めのと》とが口々に入道を批難した。
「お嬢様を御幸福な方にしてお見上げしたいと、
どんなに長い間祈って来たことでしょう。
いよいよそれが実現されますことかと存じておりましたのに、
お気の毒な御経験をあそばすことになったのでございますね。
最初の御結婚で」
こう言って歎《なげ》く人たちもかわいそうに思われて、
そんなこと、こんなことで入道の心は前よりずっとぼけていった。
昼は終日寝ているかと思うと、
夜は起き出して行く。
「数珠《じゅず》の置き所も知れなくしてしまった」
と両手を擦《す》り合わせて
絶望的な歎息《たんそく》をしているのであった。
弟子たちに批難されては月夜に出て
御堂《みどう》の行道《ぎょうどう》をするが池に落ちてしまう。
風流に作った庭の岩角《いわかど》に腰をおろしそこねて
怪我《けが》をした時には、
その痛みのある間だけ煩悶《はんもん》をせずにいた。
🍂🎼悲しみに寄りそって written by alaki paca🍂
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