微行《しのび》で、
しかも前駆には親しい者だけを選んで
源氏は大井へ来た。
夕方前である。
いつも狩衣《かりぎぬ》姿をしていた明石時代でさえも
美しい源氏であったのが、
恋人に逢うがために引き繕った直衣《のうし》姿は
まばゆいほどまたりっぱであった。
女のした長い愁《うれ》いもこれに慰められた。
源氏は今さらのようにこの人に深い愛を覚えながら、
二人の中に生まれた子供を見てまた感動した。
今まで見ずにいたことさえも
取り返されない損失のように思われる。
左大臣家で生まれた子の美貌を世人はたたえるが、
それは権勢に目がくらんだ批評である。
これこそ真の美人になる要素の
備わった子供であると源氏は思った。
無邪気な笑顔の愛嬌《あいきょう》の多いのを
源氏は非常にかわいく思った。
🪷道すがら written by ゆうり🪷
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