近所で時々煙の立つのを、
これが海人《あま》の塩を焼く煙なのであろうと
源氏は長い間思っていたが、
それは山荘の後ろの山で柴《しば》を燻《く》べている煙であった。
これを聞いた時の作、
山がつの 庵《いほり》に 焚《た》けるしば
しばも言問ひ 来なむ恋ふる里人
冬になって雪の降り荒れる日に
灰色の空をながめながら源氏は琴を弾いていた。
良清《よしきよ》に歌を歌わせて、
惟光《これみつ》には笛の役を命じた。
細かい手を熱心に源氏が弾き出したので、
他の二人は命ぜられたことをやめて琴の音に涙を流していた。
漢帝が北夷《ほくい》の国へ
おつかわしになった宮女の琵琶《びわ》を弾いて
みずから慰めていた時の心持ちは
ましてどんなに悲しいものであったであろう、
それが現在のことで、
自分の愛人などをそうして遠くへやるとしたら、
とそんなことを源氏は想像したが、
やがてそれが真実のことのように思われて来て、
悲しくなった。
漢帝が北夷《ほくい》に遣わせた宮女(王昭君)の琵琶《びわ》を弾いて‥出典はこちら↓
【源氏物語 第十二帖 須磨(すま)】
朧月夜との仲が発覚し、追いつめられた光源氏は
後見する東宮に累が及ばないよう、
自ら須磨への退去を決意する。
左大臣家を始めとする親しい人々や藤壺に暇乞いをし、
東宮や女君たちには別れの文を送り、
一人残してゆく紫の上には領地や財産をすべて託した。
須磨へ発つ直前、桐壺帝の御陵に参拝したところ、
生前の父帝の幻がはっきり目の前に現れ、
源氏は悲しみを新たにする。
須磨の侘び住まいで、
源氏は都の人々と便りを交わしたり
絵を描いたりしつつ、淋しい日々を送る。
つれづれの物語に明石の君の噂を聞き、
また都から頭中将がはるばる訪ねてきて、
一時の再会を喜び合った。
やがて三月上巳の日、
海辺で祓えを執り行った矢先に
恐ろしい嵐が須磨一帯を襲い、
源氏一行は皆恐怖におののいた
❄️🎼 雪の終わりに written by MATSU❄️
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